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Ⅳ.パッシブハウス5つのポイント(その4)

パッシブハウス5つのポイント

③のポイントは、窓のU値を0.8w/㎡・k以下にする事です。

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建物の外郭に於いて、窓は無くては成らない部材です。
パッシブハウスの設計では、この窓全体の性能値を、U値=0.8w/㎡・k以下にする様に指導しています。


U値=0.8w/㎡・k以下の窓とは、どの程度なのでしょうか。
現状、北海道の住宅建設で取り付けられているPVC窓は、K=2.33w/㎡・kと表記されています。
その性能差は、約3倍も有る事に成ります。
窓からの熱損失が3倍も多い事は、窓表面の温度が低い為に、窓面からのドラフト現象で冷やされた室内空気が、床側に降りてくる気流を発生させ床面を冷やします。
また、窓際に立つとその気流を感じ、室内温度との差で不快な状態を作ります。


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(普通の家とパッシブハウスの違い:窓性能の違いは大きなポイントです)


ドイツやEU諸国、スウェーデンや北欧諸国では、窓の性能アップに取り組んでいます。
この事実は、窓は建物には必要不可欠な部位であり、その性能アップは建物の省エネ性を向上させるだけでなく、室内環境を良い状況とし結露やカビを発生させない策となるためです。


PHIに有った、ガラス性能対比用、実験装置。
単板、複層、複層Low-E、トリプルなどを各段に入れ、中から加熱しその表面温度を目視出来る様にした装置です。

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各ガラスの性能値とエネルギー効果を表した図。

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ドイツやEU諸国、スウェーデンや北欧諸国では、窓ガラスはトリプル(3層)ガラスに移行しています。
ダブル(2層)ガラスでは、窓の冷輻射は防げないと言う結論です。
また、トリプル(3層)ガラスは、Low-E処理してアルゴン又はクリプトンガスを入れた、Ug=0.6w/㎡・k以下のガラスも登場しています。


しかし、窓は、ガラス性能だけで、決まるわけでは有りません。
むしろ、窓枠と複層ガラスの縁に付く、エッジの性能が大きく影響します。
パッシブハウス研究所(PHI)の、Susanne Theumer(ズザネ トイマー)さんは、『小さな窓を多様するよりも、窓を集約して大きな窓にする方が、熱損失は小さく成ります』と、窓枠の処理が如何に難しいのかを代弁する発言をしています。
日本では、窓を衣装的な表現として、小窓を多様したり、窓同士を接続した外観を見ますが、正しく熱損失とコストアップの両方を実践している風景と言えます。
省エネ住宅と称して、その知識の無さを曝け出している、設計者やハウスメーカーを見極める一つの手立てに成ります。


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(窓の性能値は、ガラス部、エッジ部、枠部の数値で決まります)


PHIに有った、窓枠サンプルです。
窓枠には、断熱材で内外を絶縁する処置が施されています。
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(窓枠の外側に断熱処置した窓の例)


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(木製窓枠の間に、断熱材を入れた例)


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(PVC窓枠外(左側)に、断熱処置した窓の例)

複層(2層又は3層)ガラスの、ガラス間隔を構成するエッジの材質も研究が進み、ガラスと窓枠間から熱損失を最小にする事も行われています。


更に、Susanne Theumer(ズザネ トイマー)さんは、重要なポイントを話しました。
それは、窓の取り付け位置に付いてです。
Susanne Theumer(ズザネ トイマー)さんは、『窓の取り付け位置を、壁断熱材の中央にしなさい。相する事で温熱ラインが真っ直ぐ成ります』と、話されました。

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(写真は、外断熱の壁と窓のサーモグラフィーによる、温熱ラインです)


下の、絵は外断熱工法に措ける、窓取り付け位置による窓枠Uwの違いを示しています。
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(外断熱の窓枠取り付け位置の間違い例:Uw=1.19W/mk)


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(外断熱に措ける、窓の正しい取り付け位置例:Uw=0.78W/mk)


窓の取り付け位置を、壁断熱材の中心を通るライン上にする事で、温熱ラインが曲がらなく成ります。
その状態に近づく事は、熱損失の状態が改善されて行く事に成るのです。
窓の取り付け位置を、壁断熱材の中央ラインに出来るだけ置く事で、熱損失が減る事は知っていました。
昨年設計の建物でも、窓を壁面内に取り付け、窓枠からの熱損失を出来るだけ減らす様に行っています。
PHIでの的確な指摘は、多くの実験や体験を積み重ねて来た、大変重要な事柄です。
しかも、パッシブハウスの設計、施工に於いては、その基本を的確に実施し、更なる改善が大きなポイントと成ります。


しかし、日本の窓メーカーが出している、ディテール集の殆どは、窓は外壁面上に配置され断熱ラインから外れる様に書かれています。
幾ら、ガラスの性能を上げても、根本的な間違いを冒しているのが、日本の現状なのです。
パッシブハウスの様な、高性能な建物で無くても、無駄な熱損失を防ぐ基本的な知識が無いから行っている、初歩的な間違いが日本の建築業界では行われています。


更に、Susanne Theumer(ズザネ トイマー)さんは、『窓枠を外側から断熱材で包む処理が理想的です』と付け加えました。
RC外断熱や木造付加断熱材で、窓枠を外側から包み込む事を推奨しているのです。
先のPHIに置かれていた、窓枠サンプルの様に断熱材で補強された窓枠に於いても、更に枠の外側から断熱補強を勧めているのです。
この様な考え方は、現状日本の建築知識からすると、余りにも掛け離れた考えです。
私は、パッシブハウスを推奨する立場から、その意図や考え方は素直に聞けますが、日本の建物がその様に成るには、余程のエネルギー節約意識が消費者や市場に生まれない限り、建築業界はその受け入れを考えないだろうと、現状の有様から予測するところです。


下の絵は、窓枠を外から断熱材で包み込んだ、理想的な処置方法を示しています。

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(窓枠を断熱材で包んだ絵)

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(断熱材で窓枠を包んだ時の、温熱ライン状況)


ドイツやEU諸国、スウェーデンや北欧諸国のインターネットサイトには、窓枠の断熱包みが沢山掲載されています。
しかし、日本の窓メーカーには、窓枠の断熱補強も窓枠の断熱包みの絵も写真も有りません。
いまだに、ダブル(2層)ガラスを高断熱ガラスを称し、省エネには最適だと風潮しています。
この大きな差は、エネルギーや地球温暖化対策や取り組みへの、日本とEU、北欧諸国との差に成っていると考えます。

現状、窓はどんどん進化しています。
今後、窓は壁の性能値に近づいて行くでしょう。
しかし、熱橋(ヒートブリッジ)のページでも話しましたが、根本的なポイントを総括する事無しに、一部材の性能だけを頼りにする家造りは間違っています。
私は、Susanne Theumer(ズザネ トイマー)さんの説明を聞きながら、その性能を100%発揮出来る状態を一つ一つ造る事が、パッシブハウスでは重要で有る事を改めて認識しました。


私の別ページに、窓の性能に付いて記載しています。

窓とドアに付いて
http://imagawa-k.jp/2009/01/post_73.html

窓の重要性
http://imagawa-k.jp/2008/09/post_60.html

窓は壁に近づく(その1)
http://imagawa-k.jp/2007/05/post_5.html

窓は壁に近づく(その2)
http://imagawa-k.jp/2007/05/2_2.html


次回、④気密50Pa加、減圧測定で0.6回/h以下とする事に続く。
http://imagawa-k.jp/2009/04/50pa06.html

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2009年04月20日|ページの 先頭へ|