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Ⅲ.パッシブハウス5つのポイント(その3)

パッシブハウス5つのポイント(その3)


パッシブハウス5つのポイントの②番目です。
②番目は、熱橋(ヒートブリッジ)部分のψ値(線状熱透過係数)を0.01w/m・k以下にするです。


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この熱橋(ヒートブリッジ)部分の、ψ値(線状熱透過係数)を数値で表した事が重要です。

日本に措いて、コンクリートや鉄骨建物での熱橋(ヒートブリッジ)に付いて触れられる事は有りますが、木造では、熱橋に付いては余り重要視されていません。

木造に措いては、壁や屋根部での断熱と下地材との熱伝導率の違いを、面積比で加減したりする事が一般的です。
この考え方は、熱橋部を直線的に、また面的に捉えての処置方法です。

しかし、基礎と土台、1階床の取り合い、2階床と外壁の取り合い、桁と梁、屋根材との取り合い、壁の出隅、入り隅部など、熱移動が複雑な部分に付いては、明快な表現や計算を見た事が有りません。

これは、木の熱伝導率がコンクリートや鉄から比べると低い事と、複雑な部位の処置方法や計算が出来ていない為に、それらの影響が少ないとか、僅かな数値は無視する考えがあるからだと思います。

しかし、パッシブハウスや無暖房住宅の様に、その性能を高めていくと、木部の熱橋も無視出来ない様に成ってきます。
木は断熱材の約3倍も熱を通しやすい材料です。
つまり、断熱材の入っている部分よりも、木材で構成される構造の繋ぎ目などは、3倍の熱を逃がしている事に成ります。
それが、コンクリートや鉄骨では、さらにその数値が上ります。


パッシブハウス基準では、熱橋(ヒートブリッジ)部分のψ値を、構造上の繋ぎ目部分などの、熱橋長さ当りの熱橋係数を、0.01w/m・k以下にする様求めているのです。

日本では、建築関連でのψ値に付いては、殆ど資料が無い様です。
インターネットでも、日本サイトではψ値に付いては殆どヒットしません。

ドイツやアメリカのサイトでは、沢山検索出来ますが、日本語では熱橋とψ値に付いては、検索が出来ません。
この状況は、熱橋対策や熱橋が建物の熱損失上、どの程度の負荷に成っているのかなどの、研究や問題提起が無い事を意味します。

しかし、建物の性能を向上させていくと、構造の繋ぎ目や、窓廻り、玄関ドア廻り、バルコニーや庇、風除室などと本屋の接続部などの熱橋部からの熱損失量が、無視出来ない量に成ってきます。


熱橋は以下の様な傾向を示します。

① 熱橋は、断熱層が厚い程、また建物の気密が高い程、その影響は大きくなる。
(断熱層の厚みが厚ければ、熱貫流による熱損失の量が小さくなり、結果的に熱橋部による熱損失の割合が大きくなる為)

② 熱橋は、熱損失だけでなく、室内の温熱環境や結露及びカビの発生などの、湿気による害にも関係してくる。


ドイツには、『熱橋カタログ』と言う、熱橋詳細図と性能値が書かれた本が多数有ります。
ドイツパッシブハウス研究所(PHI)でも、その本が紹介されました。
この本には、ψ値0.01w/m・k以下の各部断熱構成と厚さ、性能値が書かれています。
パッシブハウスを設計する際には、その詳細通りに各部を設計すると、PHIでの認証の際は、熱橋処理済みと見なされる事に成ります。

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(PHIで紹介された、『熱橋カタログ』本)


熱橋に付いては、フランフォーファー建築物理研究所の田中絵梨所員のレポートにも、掲載が有りました。

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(田中絵梨所員紹介の熱橋本)


(以下田中絵梨所員のレポート掲載内容から)

ドイツ工業規格である、DINの4108には、建物の断熱と省エネルギー基準がまとめられています。
その中に、熱橋部の断熱に関しても載せられています。

注釈には、①DIN4108に記されている「熱橋部の施工例」と同等とみなされる施工を行っている場合は、熱橋に関して特別な処置は不要である。

②記載内容と異なる施工をしている場合は、熱橋の影響を最も大きく受ける箇所において、温度ファクターfRsi0.7以上とならなけらばならない。
(温度ファクターfRsi0.7以上を満たすためには、室外温度が-5℃で室内温度が+20℃であると仮定した場合、壁の表面温度が+12.6℃以上である事が必要。この場合、その部分での相対湿度が50%であっても、カビの発生する危険性の無い状態と言える。)


熱橋の影響を、低減するための対策として下の3項目が挙げられます。

① 接合部の構造が複雑になりすぎないようにする。
② 躯体から張り出す部分(バルコニー、風除室、庇類)を、熱的に遮断する。
③ 外壁に複合外断熱システム(湿式外断熱)を用いたり、地下の壁も外断熱をするなど、断熱層が途切れる事のないような施工をする。

(以上掲載内容)

この様に、ドイツに措いては、熱橋(ヒートブリッジ)に対する対応を大変重視しています。
建築物理学の無い日本に於いては、大まかな処置で建物を造る考えが有る様に思えます。
果たして、その様な考え方で、本当の省エネ建物が造れるでしょうか?
そうした日本の状況下では、結果的にドイツやスウェーデンの省エネ住宅を、10~20年後追いする事に成っています。


田中絵梨所員のレポートには、こんな結びが有ります。
『建物の省エネの手法として、最近では太陽エネルギーを電力源や温水及び暖房に用いるソーラーシステムの開発がすすんでいる。
しかし、筆者が所属するフランフォーファー建築物理研究所がコンサルティングを行った、とある省エネルギー住宅において、様々な省エネルギー手法を採用した場合のエネルギー量を計算したところ、ソーラーシステムを採用した場合に得をするエネルギーの量と、熱橋を最小にする工法を用いた場合に抑える事の出来る熱損失の量がほぼ等しくなるという結果が出た。
熱橋防止は、エネルギーだけではなく、カビや結露の予防という衛生面や部屋の角に生じる部分的な低温を緩和するなど熱的快適性にも良い影響がある。
よってソーラーシステムなどの新しい技術を追加する前に、まずは建物の構造を見直す方が賢明であるのではなかろうか。』と、結んでいます。


この言葉の様に、建物の断熱材が切れる部分である熱橋部の処理が、更にその省エネ効果を高める事が書かれています。
最近の傾向であるソーラーシステム他の省エネ機器の採用を考える上で、建物の熱橋処理無しには、その効果が半減する事も強調しています。
どの様なハイテク省エネ機器を取り付けるよりも、先ずは熱橋(ヒートブリッジ)処理を行ってから、考えるべき事なのです。


今回、ドイツパッシブハウス研究所(PHI)で、日本のパッシブハウスや無暖房住宅の計画図を検証してもらった際、担当したSusanne Theumer(ズザネ トイマー)さんも、熱橋に付いての質問や確認事項が多かった事実が有ります。
このパッシブハウス研究所(PHI)基準で、熱橋部をψ値(線状熱透過係数)を0.01w/m・k以下にする事で、熱橋対策の無い建物造場合では、それは熱伝導による全熱損失の25%に達しますが、パッシブハウス基準で対策した場合には、僅か4%に減るそうです。
パッシブハウスに措いて、熱橋処理の重要性が良く理解できる数値です。

技術立国を自負する日本で、住宅がウサギ小屋化している現状は、正しくこの田中絵梨さんの結びにある、基本を見ないで家造りを行っている点である事を、認識する必要が有ると考えます。


当サイトの別ページに、熱橋に付いての掲載が有ります。
http://imagawa-k.jp/2007/12/142.html


次回、③窓、玄関ドアのU値を0.8w/㎡・k以下にする事に続く。

http://imagawa-k.jp/2009/04/08.html

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2009年04月15日|ページの 先頭へ|