先に、ナイチンゲールの教えを、4回に渡り書きました。
4回で終わる予定でしたが、もう一つ一番大切な章について、書いていませんでした。
それは、『介護覚え書』の付録『赤ん坊の世話』と言う章です。
この付録『赤ん坊の世話』は、『介護覚え書』を総括した章と言えるかもしれません。
本の一部から、
≪赤ん坊のために気をつけなけらばならない事柄≫
①新鮮な空気。
②適切な暖かさ。
③その小さなからだとその衣服、そしてベッドと部屋と家とを清潔にしておくこと。
④適切な食べ物を規則正しい時刻に与えること。
⑤びっくりさせたり、その小さなからだや、か弱い神経をむやみとゆさぶったりしないこと。
⑥陽光を取り入れ、機嫌よくさせておくこと。
⑦ベッドにいるときも、起きているときも、適切に着せておくこと。
さらに、こうしてこと《すべて》を、うまく工夫してやっていくことなのです。
各項目を建築の立場で答えると、下記の様に答えが出ます。
①新鮮な空気。 ⇒適正な量の外気を、高性能なフィルターを通して、常に供給し続ける事。
②適切な暖かさ。⇒外気温度の変化に関わらず、新鮮な空気を供給しながら快適な室温を保つ事。
③その小さなからだとその衣服、そしてベッドと部屋と家とを清潔にしておくこと。⇒室内を清掃しやすい仕上げ材で造り、掃除をし易くする事。
④適切な食べ物を規則正しい時刻に与えること。⇒これは建築外の事。
⑤びっくりさせたり、その小さなからだや、か弱い神経をむやみとゆさぶったりしないこと。⇒窓や玄関ドアの遮音性能を高める。ガラスの多層化は遮音効果が大きいし、室温の安定には欠かせない。
⑥陽光を取り入れ、機嫌よくさせておくこと。⇒高性能な窓でサイズを考えると、熱も光もコントロール出来る。
⑦ベッドにいるときも、起きているときも、適切に着せておくこと。⇒育児の基本かと思う。
さらに、こうしてこと《すべて》を、うまく工夫してやっていくことなのです。⇒建築が工夫して行わなければならない事柄が殆どです。
もう少し具合的に、①~⑦の項目を考えてみましょう。
①と②については、殆どの家では、その条件を満たす事が出来ていません。
例えば、①の新鮮な空気は、どの様にして解決しているかを考えてみると、
窓を開けて外気を入れる事で、新鮮な空気は解決出来ていると考えているあなた。
いつでも、その方策が出来ますか?
雨の日、強風の日、寒い日、冬の期間、その様に窓を開けられない日は一年間にどの位あるでしょうか。
でも新鮮な空気の要らない日は、有りますか?
①一つ取っても、一年365日完璧に事を済ます事が、現状の住まいでは出来かねているのです。
適正な換気装置では無い、第三種換気方式では、上記の窓開閉方式での影響を同じく受けています。
つまり、完璧な換気方式では有りません。
建て主によっては、冬場吸気口を閉め、外気(冷気)を入れない対策で、室温への影響を防いでいるのが現状です。
また、床下空間を利用した、換気方式が有りますが、これも外気温の影響や風の強弱で換気量が変換する曖昧さを持っています。
更に、季節により排気が悪く、室内で空気が澱む現象も考えられます。
汚い外気を濾すフィルターに付いても、適正な状態ではありません。
床下からの換気では、床下の掃除も大変ですし、実行しない期間が生じるでしょう。
そして、①と②を同時に行う事は、更に難しく成ります。
①と②を同時に成しえている住宅がどれ程有るでしょうか?
殆どの住宅では、①と②を同時に達成出来ないのです。
つまり、赤ん坊に取って、大切な事柄が1年365日完全に成し得ている住まいは、現状0に限りなく近いのです。
これは大きな問題であり、大変情けない建築事情でも有ります。
何故、赤ん坊に取って大切な事柄が、出来ない住まいしかないのでしょうか。
その理由は、①と②に付いては、余り重要視すると、解決出来ないから触れたくないし、曖昧にした方が利益や仕事がしやすいからです。
①の新鮮な空気。
これを、現状の外気を直接室内に入れると、解決出来ると考えては大間違いです。
現状の外気は大変汚れている事を、認識して条件を満たさなくては成りません。
その為には、高性能なフィルターを介して、外気を室内に入れなければ解決しません。
まず、この様な認識を持っている、建築家やハウスメーカー、工務店など建築関係者はいません。
また、その様な認識を持っていても、解決策が分からないと言うのが、本音です。
熱交換換気装置のフィルタ6ヶ月間の汚れ
更に、①に②の条件を加えたら、それは不可能に近づきます。
つまり、その手立てや方策を、殆どの建築関係者は、成すすべを知らないのです。
それは、①と②の条件を満たす家が消費者に届く事は、現状では殆ど無い事を意味します。
ではどうしたら、≪赤ん坊のために気をつけなけらばならない事柄≫を実践でしるのでしょうか。
①新鮮な空気。
これを、確実に行うには、高性能な熱交換換気装置が必要です。
しかも、性能の良いフィルターが装備されている事も条件です。
相した機器は、私の知る限りでは、REC社の熱交換換気装置以外には有りません。
何度も書いていますが、スウェーデンのREC社は、長年、換気部材を手掛けている会社です。
ドイツのパッシブハウス1号の建物にも、その熱交換換気装置が使われて、現在も可動しています。
パッシブハウスの名を広めたのはドイツですが、換気措置については、スウェーデンの製品の方が、レベルが高いと言えます。
話を戻して、②適切な暖かさ。
この条件も、高断熱、高気密(本物の)で、事足りるかと思いきや。
冬は、北海道札幌市でも、外気が-10~-15℃まで下がります。
その様な外気を、新鮮な条件下で、直接室内に入れる事は、②の条件を満たす事は出来ません。
つまり、外気を直接入れるのではなく、外気を暖めて(熱を交換して)、室温に近づける事が、必要条件と成ります。
ではその様な熱交換換気装置が、市場にどれほどあるのか。
結論は、0(ゼロ)です。
どんなにお金を掛けても、市場の物はその性能を担保していません。
また、換気ダクトの材質やジョイント処理、機械本体の気密性能、使用されているフィルターも、レベルの低い物です。
以上の理由で、①と②を同時に満足させる事は、ある意味現在の市場では至難の業と言えます。
パッシウハウスと言われる建物は、この至難の業を満足していなければなりませんが、市場のパッシウハウスは条件をクリアー出来ているでしょうか?
大いに疑問です。
パッシブハウスとは、住人にとって快適である事を備えた、省エネ住宅です。
単に、エネルギー節約住宅では有りません。
また、我慢や忍耐で住む建物では有りません。
あくまでも、健康で快適感を味わえる建物です。
しかも、最小のエネルギーで済む建物です。
うまく工夫してやっていくことを、実践するには、パッシブハウスか最低でもセミパッシブハウスの家でなければ、不可能です。
それ以外の住まいでは、①~⑦の重要事項の幾つかは、達成できません。
それは、親としての責任に於いて、、うまく工夫してやっていくことを怠った事に成ります。
以下、ナイチンゲール『介護覚え書』の付録『赤ん坊の世話』の中から抜粋を載せます。
赤ん坊はあなた方より以上に、新鮮な空気の不足を感じるものなのです。赤ん坊はあなた方より、寒さに対してはるかに敏感なのです。そして何にもまして赤ん坊は、清潔にされていないと、あなた方以上にその害を受けるものなのです。
赤ん坊はあなた方よりも、汚れた家からの害をこうむります。
赤ん坊にとって最も必要なもの、それはいつでも、新鮮な空気です。
「つまり、人がほんの少ししか空気を吸い込めないときには、そのほんの少しの空気は必ず良い空気でなければならないからです」
「しかし、今では私たちはもっとよく知っています。あなた方も知っておられるでしょうが、まあ言っておきましょう。赤ん坊のからだをすみずみまでいつも清潔にして、その柔らかい皮膚の毛孔のひとつでも埃や洗い落とされない汗のために詰まっているようなことのないように気をつけること。これが赤ん坊を機嫌よく健康にしておくためのたったひとつの道なのです。」
親は、子育てに最良の手立てを行おうとします。
しかし、一番重要な事は、身近な住まいに於いての、住環境である事はあまり知られていません。
赤ん坊が成長して行く過程に於いて、住まいが大きな影響を与えて続ける事を、認識する事も親の務めなのです。