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遠い村から来た窓(その2)

Moi(モイ)村での翌日は、快晴の天候でした。
ホテル前の景色は、湖の色と対岸の丘陵に建ち並ぶ家々の外色がマッチして、北欧ノルウェーを象徴する風景を見せてくれました。
北海道の気候に大変似ていて、空気も澄んで、気持ちの良い朝でした。

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(ホテルの前には、大きな湖が有ります。対岸には斜面沿いに家が建ち並び大変綺麗でした。)


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(この湖はノルウェーで一番深い湖と聞きました。)


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(ホテルの道路沿いの農家では、羊を放牧していました。長閑な風景です。)


ホテルからタクシーで、Moi駅の近くにある、NorDan社に向かいました。
工場併設のNorDan社の規模は、事前にインターネットサイトから調べていましたが、実際は予想よりも大きく、窓の性能への期待が高まりました。


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(NorDan社はMoi(モイ)村一番の企業です。人口2000人の村うち工場で働く人は約600人との事でした。正にMoi(モイ)村がNorDan社一色といった感じです。工場の延べ床面積は40,000㎡で、NorDan社の工場の中では1番大きな工場です。)


NorDan社では、Willem Kranenborg氏と会い、彼のオフイスへ案内されました。
自己紹介の後、NorDan社の概要とその製品である、窓に付いて説明を受けました。


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(NorDan社の概要を説明している、Willem Kranenborg氏)


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(NorDan社工場所在地を示した地図。ノルウェー4工場、スウェーデン2工場、ポーランド1工場の計7工場があるそうです。)


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(窓のバリエーションも豊富です。)


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(U値0.7W/㎡・Kの窓枠とガラスに付いてです。窓はガラスの性能が進化して、現在は窓枠からの熱伝導を如何に小さくするかの段階にあるとの説明です。その為にNorDan社の高性能窓は木枠間にポリウレタンを挟み込み、木枠からの熱伝導を小さくして窓総合の性能値を上げています。)


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(同じく、U値0.7W/㎡・Kの窓)


トリプルガラスのエッジ部である、スペーサーはスーパースペーサーと呼ばれ、特殊な素材で出来ています。
ガラスは、トリプルガラス(4-16-4-16-4)です。
また、窓枠の木枠間にポリウレタンを挟み込み、木枠からの熱伝導を小さくする加工が、断面部でよく解ると思います。

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(窓枠の断熱断面です。窓枠内の断熱材とスーパースペーサーの断面が見えます。)


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(NorDan社の窓展示場で、開閉機能などの確認をしました。)


詳しくは、『ノルウェーの窓』をご覧ください。
http://imagawa-k.jp/2008/09/post_62.html

一通りの説明の後、窓の輸入に付いて商談しました。
その中でWillem Kranenborg氏は、世界的な省エネ政策への移行から、ノルウェーを始め取引先の国々からの引き合いが大変多く成っている事で、NorDan社の生産キャパが一杯であり、アジア向けには出荷出来る状態では無いと言われました。
大変残念な言葉で、私達は落胆しました。
折角、遠い国まで来て、その製品の確かさを確認した後での言葉に、今までの疲れが感じられる程でした。


しかしその後に、地元の工務店を通しての限定的な数量であれば、対応できるとの言葉を貰いました。
日本の現状では、多くのパッシブハウスや無暖房住宅が建つ状況には無く、従ってこの様な高性能窓を必要とする建物も限られています。
限定的な建物を、建てて行く現状では、それで充分だと思いました。
今後、NorDan社の窓を日本国内で認知してもらい、数量が増える状況になれば、改めて商談出来ると考えました。
今の日本の建物では、余りにも『宝の持ち腐れ』と言える位、素晴らしい窓ですから。


こうして話は進み、NorDan社のU値0.7の窓を2棟分注文しました。
当時は、為替レートも大変不利な状況でしたが、2008年末竣工予定の建物に使用する計画での発注でした。
しかし、出荷には思いの他時間が掛かりました。
外国企業の為に、企業の夏休みや個人休暇が長かった事と、生産キャパの限界などで、当初の入荷予定が大幅に遅れ、出荷が10月末で苫小牧入港が12月4日と成ってしまいました。

その様な経過で荷揚げされたNorDan社の窓に、12月10日に対面したのです。
苫小牧の倉庫で、その荷姿を確認してきました。
その中で、一番サイズの小さな窓を、1台事務所に持ち帰りました。
細かなチェックをする為です。


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(事務所に持ち帰った、NorDan社の窓です。サイズは外寸で580×580です。)


今回の窓は全て内開きタイプです。

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(内側に開いた状態の窓)


此処で、いつも思う事ですが、何故日本国内で販売されている窓は、外開きなのでしょうか。
スウェーデンやヨーロッパの国々の窓を見ると、殆どが内開き窓です。
しかし、何故か日本に輸入されているスウェーデン製の木窓も外開きタイプです。
雨の多い日本の気象条件などで、外開きに成っているのかもしれませんが、この開き勝手で窓の断熱補強方法も変わってきます。


例えば、外に断熱や遮熱の為のブラインドや扉を設けた場合、外開きだと窓が開閉が出来ません。
外での補いが出来ないのです。
NorDan社の窓でも、U=0.7W/㎡・Kです。
この数値でも、壁の断熱性能から比べると、1/5~1/10以下です。
高性能な、パッシブハウスや無暖房住宅では、これでも弱点である事には変わりはありません。
そうした事から、障害の出やすい内部側での窓断熱補強よりも、外側での断熱補強の余地を残す方が有利です。
パッシブハウスや、無暖房住宅を考えると内開き窓が最良と考えます。


もう1点、スウェーデンからの輸入窓は、外面ガラス清掃の為、横軸回転窓を主体にしています。
しかし、よく考えてみると、横軸回転窓では回転する窓重量を負担ために、相当量の金物で吊る必要が有ります。
その金物は、熱橋の原因となり、結果的に窓の性能を低下させています。
窓枠まで、断熱処理する事を考えているのに、これでは意味がありません。
NorDan社の窓は、外部に出る金属部や窓開閉時の締め付け金物が、極力少なく成る様に作られています。
この点もよく考えています。


写真は、スウェーデンの展示会場での、NorDan社の窓の断面模型です。
左がU=1.2、右がU=0.7の窓です。
この違いは、U=1.2がペアガラス、U=0.7がトリプルガラスです。
また、枠の見込み幅が、U=1.2が92mm、U=0.7が105mmの違いが有ります。

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(展示会場のNorDan社の窓の断面模型)


写真は、事務所内での写真です。
NorDan社の窓の上に、現地から持ち帰った窓枠材料の一部を置いた写真です。
この窓枠材料のサンプルには、約17mm幅のポリウレタン材が挟み込まれています。
枠の熱橋対策の処置です。
下の実物の窓にも、サンプルが置かれている同位置に、17mmのポリウレタン材が挟み込まれています。

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写真は、トリプルガラスである事をロウソクの炎で示したものです。
ガラスは、4-16-4-16-4の構成で、ダブルLow-Eのアルゴンガス入りガラスです。

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持ち帰ったNorDan社の窓を確認して上で、現状の商流で最も性能(U値、気密性能共)が良い、スウェーデン製の窓と比較検討し、総括してみました。

① 枠が断熱区分され熱橋対策がなされている。(現状の商品として最高の性能値である、U=0.7W/㎡・Kの数値をだしている。)
② スーパースペーサーの採用で、熱橋対策がなされている。(スーパースペーサーは、熱伝導的に有利な点と、窓ガラスの変形にたいしての追従性が優れている。)
③ 枠の組み方が、精工で耐久性がある。(スウェーデン製の木窓との外観目視対比による。)
④ レバーハンドルなど、金属類の使用が最小限で作られている。(熱橋対策を考えると、外部側に出ている金属部分が殆ど無いなど、窓の開閉機能と相反する中で、よく考えられている。)
⑤ 窓枠と框の締め付けが四方で行われる様に工夫がある。(熱伝導と同じく、重要な気密性能保つ締め付け機能がよく考えられている。)
⑥ 値段は、窓の塗装込みである。(スウェーデン製の木窓は無塗装での販売の為、購入後塗装手間が必要と成る。出荷前の工場塗装で品質の確保と塗装費込みの価格を考えとコストメリットが有る。)
⑦ 内開き、ドレキップの多機能開閉仕様である。(比較対象製品のスウェーデン製の木窓は、横軸外回転タイプのみであり、開閉機能に有利性がある。)
⑧ 内開きなので、外に外ブラインド、あるいは鎧戸などの性能アップ処置が可能となる。(熱損失部位の窓を、更に外側で断熱強化出来る内開きである。)
⑨ 外側の付加断熱から、窓枠に対し断熱補強が可能である。(内開きの為に、窓枠に対し外部側に断熱材補強がし易い為、窓部位の性能アップが図れる。)

   
以上が現在考えられる、NorDan社U=0.7W/㎡・Kの窓の、評価と有利性です。
この窓を使い、2009年春から、いよいよ無暖房住宅PROJECT-1がスタートします。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2008年12月22日|ページの 先頭へ|