パッシブハウス5つのポイントに、熱橋値ψ0.01W/mk以下にすると有ります。
このψ値は、日本の建築学会や業界では、まったく聞かれい記号値です。
国内サイト検索しても、建築上の熱橋値としては、ヒットしません。
しかし、ドイツやスウェーデンでサイト検索すると、ψ値に関する内容が沢山出てきます。
この差は何なのでしょう。
また、ドイツには、熱橋だけを取り上げた本が沢山あります。
熱橋処理の、ディテールが書かれた本も有ります。
しかし、熱橋が重視されていない日本では、熱橋値の専門書は有りません。
高断熱、高気密と言われる高性能建物や、鉄筋コンクリート造の外断熱建物では、熱橋処理が重要です。
建物性能を、どんどん高めていくと、最終的に処理が難しいのは、熱橋と換気です。
その2大問題の内の二つを、軽視している日本の建物は、即ち低い性能建物しか存在しないとも言えます。
写真は、日本でよく見かけるバルコニーです。
この便利なバルコニーは、熱橋対策の難しい部分です。
(日本で良く見かける、バルコニー)
下の写真は、バルコニーのサーモグラフィーです。
温度の高い部分(赤色)が、大変多く有ります。
これは、熱の逃げ場(熱橋)が、多い事を示しています。
(バルコニーのサーモグラフィー画像)
また、下の写真は、バルコニー以外での、建物の突出部位(庇部、ピロティ部等)の、サーモグラフイー画像です。
バルコニー同様、建物との接続部分は、赤く描かれ熱が逃げている事を、示しています。
(その他の熱橋部、断熱で絶縁していない部分)
下の絵は、バルコニーを断熱材で上下または、上部を囲った場合です。
バルコニーを断熱材で囲う厚みの限界も有り、熱橋を無くす程の効果が無い事が分かります。
(断熱材でバルコニーを包んだ場合)
下のサーモグラフイー画像は、左:バルコニー有りだった建物を、右:バルコニーを無くした建物にした違いを表したものです。
ご覧の様に、バルコニーを無くした効果が、ハッキリと出ています。
(バルコニーの有る無しでの、熱損失を表したサーモグラフィー画像)
写真は、バルコニーの熱橋対策用の治具です。
外断熱材と同じ位置に、治具の断熱部分を合わせ、バルコニーの鉄筋と一緒に、コンクリート中に埋め込みます。
バルコニーと建物の繋目に、治具の断熱材が位置して、熱橋を防ごうとする物です。
(ドイツのバルコニー絶縁治具)
ドイツの、バルコニー熱橋防止治具の、PR画像です。
熱橋が少ない事で、壁際に腰を下ろした女性が、冷たさを感じないと、強調しています。
(ドイツのバルコニー絶縁治具PR画像)
この治具を入れたバルコニーの付根の、温度分布図です。
ご覧の様に、内部側の熱移動が少なく、均一な色で表されています。
(ドイツのバルコニー絶縁治具の断面熱画像)
でも注意したい点は、外断熱材の断熱厚さと、治具の断熱材の厚さが、ほぼ同じ状態での熱画像である点です。
外断熱材が、治具の断熱材(80mm、120mmの2種類有り)よりも、厚い断熱材を必要とする様な、パッシブハウスなどでは、治具の効果も限定的なものと成ります。
パッシブハウス基準である、熱橋値ψ0.01W/mk以下との関連では、このドイツの治具は、どうなのでしょか。
その数値が出ている資料を見つけました。
下が、ドイツの治具(断熱80mm、120mmの2タイプ)の、サーモ図と熱橋熱分布図です。
(ドイツのバルコニー絶縁治具80mm断熱タイプの熱橋Ψ値)
上の温度分布図では、外断熱材の厚みから比べると、治具の断熱材の厚さが薄く、かなりの熱が移動している事が分かります。
また、80mm断熱材仕様の、バルコニー絶縁治具のΨ値は、0.349W/m・kと有ります。
では、120mm断熱材を仕様した治具の場合は、どうでしょうか?
(ドイツのバルコニー絶縁治具120mm断熱タイプの熱橋Ψ値)
120mm断熱材仕様場合でも、Ψ値=0.303W/m・kです。
つまり、80mm、120mmタイプ両方共に、冒頭に書いた、パッシブハウス熱橋基準値、0.01W/m・kの、実に30倍以上の熱橋値で有ることが分かります。
ドイツの治具では、パッシブハウス熱橋基準値はクリアー出来ない事が分かりました。
万全かと思われた治具でも、鉄筋コンクリート造の建物では、バルコニー部分の熱橋は、パッシブハウスで求められている基準値Ψ値=0.01W/m・k以下は、達成出来ないのです。
では、バルコニーの熱橋対策は、どの様にしたら良いのでしょうか。
一つの方策が、下記の絵に有りました。
左側から、一般的な外断熱で、これでは説明してきた通り、バルコニーは無防備で、☓です。
中央の絵は、熱橋防止治具を使った場合で、これも説明の様に、完璧には程遠い事が、分かったと思います。
最後の、右側の絵で、建物とバルコニーの縁を切り、独立させる方式です。
この場合は、熱が伝わる、熱橋が少ないかまたは有りませんので、ほぼ完璧な熱橋対策に成ります。
つまり、建物とバルコニーを、独立した形で造り、断熱材を挟んで、熱の流れを無くすか、出来るだけ少なくする事であると、説いています。
(ドイツのバルコニー熱橋対策の順序)
写真は、ドイツの共同住宅バルコニーです。
ご覧の様に、バルコニーが2本の柱(内側と外側)で支持されて、建物とは一部の繋がりとしています。
(ドイツの自立型バルコニーの例)
高性能な建物では、熱橋が大きな影響を及ぼします。
性能の低い建物では、問題に成らなかった小さな熱の橋が、大きな欠陥に成ります。
熱橋は無視出来ないのは、鉄筋コンクリート造以外の鉄骨造では、より大きな熱損失部となり、その影響が大きく成ります。
また、木造の於いても、断熱材を厚くするだけでは、熱橋を防ぐ事は出来ません。
断熱材を重ねる過程で、熱の通り道を小さくする工夫が必要です。
そこには、耐震性や耐久性も、考慮しなくては成りません。