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スウェーデンより寒い北海道(その2)北海道の家は冬をむねとすべし

(吉田兼好徒然草から)家の造りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。
(住まいは、夏を考えて造るべき。冬は、住もうと思えば何とかなる。猛暑での暑い住まいはどうにもならない。)


家の造りやうは、夏をむねとすべし。の文は、サイトの中でよく見かけます。
しかし、これは本州での話です。
津軽海峡を渡った、北海道は別世界です。
しかも、北海道の道央以北では、冬の厳しさはさらに増し、『冬をむねとすべし』と言わなければ嘘です。
お盆を過ぎると、秋風が吹き、10月下旬には冬支度です。(2010年は少し夏が長いですが。)
それから、6か月間近くは、冬と言える季節が続くのです。
毎年、こんな季節を繰り返し体験している道民でも、のど下過ぎれば熱さをわすれる如く、寒さを忘れています。
しかし、確実に毎年長く厳しい冬が来ます。
そんな、土地がら上、住まいは冬に対応できる性能が不可欠です。


下の表は、世界各国の消費エネルギー量を表しています。
上段は、アメリカ全体と各都市、その下に日本全体と、北海道、関東、九州と続きます。
さらにその下は、カナダ、オーストラリア、UK、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、デンマークの順序です。

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北海道の暖房エネルギー量(青ライン)は、日本国の中では大変多い量に成っています。
しかし、北海道内の住宅でも、全室暖房で各室が20~23℃程度に出来る家はどの位あるでしょうか。
全室暖房で、上の室温を保つと暖房消費エネルギー量が多い為、経済的に負担が大きく成ってしまう家庭が殆どだと思います。
そして全室暖房設備を、間欠部分暖房的で使用したりして、設定温度を下げるなどのエネルギー節約を、実行している家庭が多いのが実態でしょう。


処で表の中、ドイツ、スウェーデンの暖房エネルギー量が、北海道よりも多く表れていますが、スウェーデンより寒い北海道(その1)で書いた内容では、北海道よりも気温は高く、暖房度日も少ないのに何故この様な数字に成るのでしょうか。

それは、この国々では全日全室暖房が常識であり、家の中に非暖房室などは有りません。
例えば、ドイツ、スウェーデンでは、集合住宅の共用玄関に入ると、そのには暖房用の放熱器が必ず有り、共用部分は暖房エリアなのです。


スウェーデンの例で説明します。
写真は、ストックホルム市郊外の団地です。
この団地は、移民の人達が多く住む地域に有ります。
団地が古くなり、建物が荒れだすと、犯罪件数が増え団地内が荒んだ状況に成ってきました。
また、建設当時は最新且つ斬新で有った都市計画も、誤った方策や計画の評価に変ってきます。
その為、団地の大改修計画を行う事に成ったとの事です。
一部改修工事が行われていると言うので、視察した時の写真です。


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(団地内全体の様子)


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(日本の集合住宅に似ています。この建物を外断熱化し、バルコニーなどの熱橋対策を行い、省エネな建物に変える計画です。)


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(改修前の集合住宅の共用玄関前)


改修工事を行う集合住宅ですから、30年以上前の建物です。
その様な建物でも、共用玄関付近には暖房器が完備されています。


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(暖房用の放熱器が共用部に有ります。)


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(共用部から各戸への廊下を写す)


ご覧の様に、スウェーデンやドイツでは、共用部は建物内で暖房が完備されている住戸の一部スペースと言う考えが常識なのです。

しかし、札幌市内の集合住宅で、共用部で暖房機器を見かけたのは、外断熱マンションで有名な、『センティアム宮の森』くらいです。
その他の集合住宅では、共用部に暖房機器は見た事は有りません。
日本では共用部は、建物の内部とは考えられていないのです。
共用部を暖房する事は、もったいない、誰もいないのに必要ない、などと言った考え方からでしょう。
しかし、各住居へ通じる共用部は、各戸を囲う外郭です。
建物内に何故、非暖房スペースを造るのか、理解出来ません。
それは経済的でも無く、暖房エリアと非暖房エリアの作る事で、色々な弊害も起きてきます。
それは、入居者に取って良い事には成りません。


上のデータ表も、現地確認無しの集計資料ではないでしょうか。
掲載されるこうした資料にも、その実態を知って見ると不自然さが分かります。
この様な表が示され、日本の住まいが、ドイツ・スウェーデンの建物よりも、性能が良いとか適正な性能だとかと、言われる事が怖いのです。
実施には、大きな室内環境の違いがある事を、知っておく必要が有ります。


スウェーデンより寒い北海道(その1)にも書きましたが、改めて確認したい事は。

北海道は、ドイツ・スウェーデンよりも、冬は厳しく寒い事。
暖房消費量が北海道の方が少ないのは、ドイツ・スウェーデンよりも室内環境が、劣る状況から出ている事。
冬を快適に過ごせない住まいは、北海道の建物としては落第である事。
冬対策を行う住まい造りが、北海道に相応しい住いとなる事。
『北海道の家は冬をむねとすべし』が、住まい造りの基本です。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2010年09月02日|ページの 先頭へ|