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理論と技術の静止した日

『地球が静止する日』 と言うアメリカの未来SF映画が有りました。
2008に、キアヌ・リーブス主演で公開されたものです。
地球人の振る舞いが目に余り、それを止める為に宇宙の使者が地球人に警告を告げるストーリーです。


そのストーリーとは少し違いますが、事態の静止を思わせる事が有りました。
書籍類の整理をしていた時、懐かしい本が出てきました。
それは、80ページの程の薄いA4サイズの本でした。
『木材と住宅を考える』と題した、非売品の本です。
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『木材と住宅を考える』表紙


この本は、北海道木質材料需要拡大協議会と言う木材普及為に一時的に組まれた、協議会が発行した本です。
1984当時、営林局名であった林野庁が主体で木材需要拡大の一環で、札幌市豊平区のマイホームセンターに、『木の家』と名付けたモデルルームをオープンさせ、一連の活動に活用する為作成したものです。


当時、理論と技術の先端を行く先生達により校正された内容で、時代の先取りをしたものだったと記憶しています。

正しく今読み返しても、現在でも十二分に通用する内容です。
これは、出版にご協力された先生達の、理論の正しさや先見性が有ったからです。


しかし一方では、その後の進化が殆ど無い事に驚きを隠せません。
26年間の進化がどれ程かは、下の書く項目内容を読まれて判断して頂きたい事ですが、
贔屓目に見ても、その鈍化もしくは停止状態は明らかです。


日本の住宅が中々向上しない事が言われる中で、その原因はこの様な理論や技術の停滞が原因ではないかと思わせる事実です。
スウェーデンやドイツを訪れると、その明快な受け答えは、理論と技術の裏付けから来るものと理解しています。
しかし、国内ではその様な、歯切れの良い理論は聞かれず、何年も研究や解析中の回答しか有りません。
インターネットサイトでの検索結果からも、その理論の低さは、諸外国の内容からも明らかです。
日々進化する廻りの物事と、余りにも停止状態の建築業界は、正しく日本の暗部的存在に成っています。
人の営みに於ける、建築物のあり方がその国の国力や国民のあり方までにも影響します。
住宅が26~27年寿命では、国力が衰退する事は明らかです。
また。居住環境の劣悪さや、省エネ率の低さは、明らかにそれが原因であるとと言えます。
国家財産を形成する、建築理論や技術が静止した状態は許されないと考えます。


PDF001-北海道の家造り
北海道に相応しい外観やプランに付いて書かれています。
また、過度な外観への警笛も鳴らしています。
しかし、この警笛も何時しか聞こえないものに成った様です。


PDF002-熱損失の小さな家をつくろ
北海道の住いの有り方が書かれています。
断熱の重要性を始め、気密が断熱効果や熱損失に対し、大変効果が大きい事を明確にしています。


003-木材の腐らないための最新技術を
このページでは、気密と防湿の事が書かれています。
現在の新住協(新在来木造工法)室工大の鎌田先生が提唱した、在来型改良工法の説明が有ります。
通気層、防風層や小屋裏換気など、現状方法のベースを明確に書いています。


004-暖かを保つための知恵とお金を使おう
このページは、余りお勧めできませんが、全体を見る上で掲載しました。
暖房方式が、方向を誤ったページだと言えます。
パッシブ換気なども、この数年後に出てきますが、正誤を見極める目も必要に成ると思います。


005-魅力的な空間・・・北海道ならではの家づくり
ここでは、北海道に相応しい魅力的な住いを提唱しています。
確かに、閉鎖的な冬の期間が長い北海道に於いては、必要な提案かもしれません。
しかしこの後、明確な空間造りを示さなかった事で、間違った紛い造りで本来の目的を外れ、欠陥を引き起こす空間に成っています。
具体的な方策や方法をはっきりさせなければ、裾野の広い業界では活用出来ない良い例と成ってしまいました。


006-100年使うことを考えて間取を考える
100年住宅の先取りと言えるかも知れません。
当時の業界では、その意図が見えていなかったかもしれませんが。


007-断熱を中心に必ずとり入れる技術と工法のいろいろ
在来型の床下断熱や防湿施工には、問題が多かった事が伺えます。
中々、技術的に正しい施工が行われていなかった様で、言葉にそれが感じられます。
しかし、その内容は現状でも殆ど変らず、少しの応用で行われています。
また、土間床の推奨も興味ある内容です。


008-GW系断熱に必要な防湿・防風・通気層
当時は、防湿・防風・通気層の理解が低かった時代です。
各処理が、何故必要なのか理解できていない時代でした。
しかし、書かれている内容は、現在でも通用するもので、その理論上なんの遜色も有りません。
断熱材の使用量(厚さが薄い)が少なく、それにより折角の防湿・防風・通気層の効果よりも、問題を引き起こ時期がこの後数年続く結果と成ります。


009-ボード状外張り、併用工法
板状断熱材を使用した工法の説明です。
現在もその応用で、外張り断熱工法として残っています。
しかし、防湿と気密の曖昧さを生み、多くの問題や効果の現象を招きました。
その影響は、現在もそのまま残っています。


010-天井断熱には多くの配慮が必要
このページは、現在でもそのまま使えます。
断熱の厚みが増した程度です。


011-窓からはこんなに熱が逃げる・こんなに熱が入る
このページは、余り進化していない項目です。
現状でも、窓の脆弱さは余り改善されていません。
ここでも、その問題を述べていますが、一方で日射取得の有利性を謳っています。
この考えは現状でも変っていない様で、その方向性が正しい事を示すだけ、窓の性能が進化していな事が現在も問題として残ったままです。
如何に、進化が止まっているかが分かる項目です。


012-大きな窓・小さな窓・断熱戸
断熱戸を推奨していますが、この断熱戸は熱を逃がさないが、窓面結露を引き起こす原因に成ります。
簡単に作成して出来る様に書かれていますが、その問題提起が浅いかった様です。
また、マーバンなる材料も、数年前に発売中止に成りました。
この省エネ、エコの時代に存在させないメーカーの、製品に対する浅い考えが見えてきます。
時代の流れと、その意思の継続は、製品開発の出発点かズレの無い事が重要ではないかと考えさせられるページです。


013-気密化と換気
気密化に付いては、先に書いた改良工法(新住協=新在来木造工法)に触れています。
この後、工法のオープン化で、在来工法の気密性能が飛躍的にアップした事は事実です。
私の手掛けた、北海道パッシブハウスでも、気密施工はその内容で行いました。


換気に付いては、この時点からの進化は殆ど無いと言えます。
この本の後ろには、協賛メーカーの製品が載っています。
その中に、三菱電機のロスナイが有ります。
熱交換率を70%以上とか、67%以上などと掲載しています。
この数字は、現状も変わりなく広告宣伝しているようですが、正しく進化が止まった状態です。
26年前にこの製品を自宅の居室に取り付け、大失敗した経験が有ります。
メーカーの宣伝を鵜呑みにした結果であったと、その後の教訓にしています。


この本は、当時としては先端の理論と技術を凝縮したものでした。
しかし、26年前の本が現在でも通用する内容で有る事に、業界の進歩が静止した状態で有る事を認識して改めて驚愕しています。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2010年07月07日|ページの 先頭へ|