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パッシブハウスあれこれ

北海道パッシブハウスが完成して4カ月が経ちました。
室温は安定(21~22℃)していて、外気温に左右されない室内環境です。
これからの夏季期間の、遮熱対策と換気装置のバイパス機能で、室温を程度に出来るのか大変楽しみにしています。
熱交換換気装置も、期待通りの性能を発揮して、選択での間違いが無かった事を自負しています。
外気の汚れの酷い事が、換気装置のフィルター汚れで良く分かります。
高性能なフィルターを介して入る外気で、室内は大変クリーンで掃除の手抜きが有っても大丈夫な状態です。


こんなパッシブハウスを現実に建てたのですが、過去に設計・監理した建物にもパッシブハウスが有ったのです。(訳あり)
それは、4年程前に、設計・監理した住宅ですが、毎年の冬期間暖房を石油ファンヒーター1台で行っている住宅が有ったのです。
その住いには、セントラルヒーティング設備が装備されています。
しかし、ご夫婦2人暮らしのその住宅では、リビングに置いた石油ファンヒーター1台で、全室の暖房を行っていると言うのです。
実は、冬期間に訪問していなかった私がその事実を聞いたのは、2シーズン後の事でした。
1度もセントラルヒーティングを活用した事が無いと言われるのです。
これには、私はビックリしました。
札幌市近郊の町に建てたその住宅は、延べ床面積159.19㎡(48.24坪)の大きな建物のです。
この建物を、石油ファンヒーター1台で、真冬を過ごす事が出来ると言うのです。
驚いて、『寒くないのですか』と聞くと、『特段寒く無いです』との返事です。
石油ファンヒーターでは、室内空気の汚染が心配です。
また、部分間欠暖房では、結露から起るカビの発生など、建物や人体への影響が考えられるので、セントラルヒーティングを活用してくださいと助言しましたが、実行していただけるのか。


延べ床面積159.19㎡(48.24坪)を、石油ファンヒーター1台で暖房すると、暖房エネルギー消費量はどの位になるのでしょうか。
仮想定して、灯油消費量がドラム缶(200L)1本分で済んだとしたら、200÷159.19㎡=1.25L/㎡と成ります。
ドイツのパッシブハウス基準では、年間暖房消費エネルギーは15KWh/㎡aで、灯油換算では約1.5L/㎡です。
つまり、この住いは、ドイツのパッシブハウスの暖房消費基準以内である可能性があるのです。
そうすると、この住いはパッシブハウスでしょうか?


でも、それは違います。
159.19㎡(48.24坪)全域が、20~22℃の状態でしょうか?
そうは成っていません。
リビングは23~25℃前後に成っても、部屋の隅々では20℃を下回る状態でしょうし、窓際は更に低い温度だと思います。
そして、暖房していない部屋の温度は、15℃以下の処もあるのではないでしょうか。
つまり、年間暖房消費エネルギーが幾ら低いからといっても、また居住者がこの状態で快適と言っても、その住いはパッシブハウスとは言えないのです。
基準値が有っての、エネルギー消費量であって、我慢や自己満足温度によっての、暖房エネルギー消費量ではないのです。


こんな話も有ります。
東京の設計事務所の方が、東京の事務所では室温15℃ですごしていると、自慢げに話していた事が有ります。
北海道の住いは暑すぎる、モット節約出来るとも言っていました。
この事務所も、暖房エネルギー消費量だけ見れば、パッシブハウスと言えそうです。


しかし、快適室温とされる温度は人により違います。
ドイツのパッシブハウス研究所では、全室温を21℃前後にした状態での、暖房消費エネルギー量を15KWh/㎡aとしています。
相した室温設定(大多数の人が快適と感じる温度)を無視した様な、15℃とか18℃とか言う室温ではパッシブハウスとは言えないのです。
しかし、そうした内容で、パッシブハウスと名乗る建物が、横行しているのが現状なのです。
としたら、私は過去に沢山のパッシブハウスを設計・監理した事に成ってしまいます。


北海道パッシブハウスに住んでみると、室温22℃前後が、生活に適した快適な室温だと言う事が良く分かります。
北海道の行政機関では、冬期間の室温を20℃にしましょうと啓蒙していますが、現状の住いで室温20℃で過ごす事には無理が有ります。
床、壁、屋根の断熱不足と窓の性能が極端に低い為です。
こうした状態で出来た住いでは、室温20℃では大多数の人達が、不快と感じる状態に成ります。
つまり、現状北海道内に建っている建物で、室温20℃を全室隈なく均一保つ事は不可能ですし成りえません。
人が活動するスペースのみを20℃とするれば、その他のスペースは15℃前後の状態になり、不快スペースが多く存在する住いに成ってしまいます。
また、先程の心配である、結露やカビの発生から、住いには勿論、住人にも健康的被害が及ぶ事が考えられます。
北海道の自然状況は大変厳しいものです。
その厳しい環境を克服する住いが、我慢や忍耐で成り立っているのでは、おかしな事です。


ドイツのパッシブハウス概念には、次の様に記載されています。


『パッシブハウスの目的は、住む人の快適性を過大な設備を行わず、少ない投資で成し遂げる事です。
設備に頼らずパッシブな手法により建築された住宅は、省エネ機器に依存した住宅よりも可動部が少なく、その様な住宅よりもはるかに長い間、維持費を最小に抑え、建設当時の性能を維持します。
仮に、パッシブな手法を取り入れずに、通常の住宅に省エネ機器のみで快適性を求めた住宅では、その機器の寿命(長くて20年)と共に、快適性は失われ住宅としての価値も失う事に成ります。
パッシブハウスは、この時点でも初期の性能を維持していて、その維持費の差は大変大きく成ります。』


建物本来の目的も意味も、パッシブハウスの概念の通りだと思います。
この言葉通りの、パッシブハウスと名乗れる建物がどれ程あるでしょうか。
パッシブハウスと言えるのは、限りなく0%に近い数字になる事でしょう。
北海道パッシブハウスから、北海道が求める本当の住いの姿が見えてくると思います。
建設した目的は、正しくそれを示す為です。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2010年05月24日|ページの 先頭へ|