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何を変えると建物の性能が上るか

住宅を造る際、何処をどの様に変えると性能が上るかを考えて見ました。
建物の熱は、床、壁、天井(屋根)の面から熱伝導で逃げて行きます。
その他に、窓やドアから、そして換気からも熱は外に逃げて行きます。
下の絵の矢印の様に、建物の各部から熱が逃げています。


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(建物からの熱損失を示す部位毎の%数、スウェーデンのカタログから)


この赤矢印部分からの、熱の逃げ道を制御して熱損失を少なくする事で建物の性能が上ります。
一番の方策は、熱の逃げる部分を断熱材で覆い、熱の逃げる量を少なくします。
断熱材の厚さを増していくと、その逃げる量はどんどん少なくなります。


更に、建物の気密化を図ると、内外の空気の移動を少なくする事が出来ます。
それは、熱が空気の移動と共に屋外に逃げたり、冷たい空気が勝手に出入り出来ない状態(制御)に成ったと言えます。
気密化する事で、断熱材の効力が想定していた性能と成ります。
気密化が曖昧ですと、断熱材の効力は低下するのです。

窓、ドアなど外郭を形成する部材の性能も上げます。
これらを行う事で、建物の性能が向上する事に成ります。


では、もう少し具体的に、方策を考えてみます。

建物の外郭部である、床、壁、天井(屋根)に対し、断熱を厚くする事で、熱の移動を小さく出来ます。
完全に熱の移動原理を無くす事は出来ませんが、かなり小さくする事は出来ます。
でも、経済効率があるので、ある程度の厚さでやめる事に成ります。
その厚さはどの位か?と言うと、求める建物の性能により異なります。
各地区での断熱材の厚さ目安は、次世代省エネ基準が使われる事が多いのですが、この基準値は1999年(平成11年)に改正告示された基準です。
現在から11年も前に出来た、基準値をいまだに次世代省エネルギー基準と言い、年間暖冷房負荷基準値に使っている国が有るでしょうか。
そうしたことから考えても、現在の北海道の住宅で使われる断熱材量では、不足なのは明らかです。


例えば、壁断熱厚は現状の新築建物では、繊維系断熱材で100~150㎜程度です。
この厚さでは、熱の流失が大きく、室内環境を安定させ快適性を保つには、大きな室内熱エネルギーで補う必要が有ります。
室内を快適な適温に保つには、エネルギーが掛かる建物と言えます。
また、断熱材の多層化が無いので、熱橋(ヒートブリッジ)での熱損失を多く含みます。
つまり、省エネな建物では無いのです。


エネルギーコストが高値で推移している現在、それが乱高下しながら今後も高騰する事を想定すると、新築時には、次世代省エネ基準値よりも、断熱材を厚くする事をお勧めします。
また、次世代省エネ基準値を新築建物の性能判断基準にする事は、将来大きな後悔を残す事は間違い有りません。

新築を行う事は、未来への期待と希望を考える事でも有るはずです。
その時の検討に措いて、断熱材使用量は大きなポイントなのです。
何故ならば、建物を維持管理する費用とか、その建物の耐用年数に断熱材量は、大きな関わりを持っているからです。


しかし、現状の建築業界関係者は、目先の選択を優先します。
それが、皆さん消費者の大多数の、希望とも一致する様に仕向けています。
でも、住いの色、形は一時的な要素で、機能と性能は永続的な要素です。
色、形を無視する事を良しとは言いませんが、殆んどのハウスメーカーや建築家、建築士は、その事を前面に出し他社との差別化を図っています。
余って、皆さん消費者もその構図に乗って、行動させられて選択してしまいます。


でも、建築家、建築士、ハウスメーカー、工務店は、皆さん消費者の維持費や耐用年数には責任を取りません。
竣工後の維持費は、全部皆さん消費者の出費です。
そして住まいの快適性、住まいでの健康への影響などに付いても、造る側は責任を負うような仕組も当然有りません。
そう考えると、新築時の検討内容に付いて、今までと違う考え方が必要に成ってくるのではないでしょうか。
そこからスタートしないと、建物の性能は上がりません。


もう一度、整理しましょう。
熱はどの様にしても、逃げていきます。(熱損失0には出来ません)
ですから、逃げる量を減らすのです。
減らすには、断熱材を厚くします。
ただ厚くするのではなく、熱の逃げる道(橋)を細くするのです。
その為には、断熱材を多層化します。
多層化する際、構造体と多層化層を繋ぐ方法を出来るだけ熱が逃げづらくします。
断熱はこの工夫で大きく効果を発揮します。


また、断熱材の入れ方も重要です。
シワが出たり、隙間が有る入れ方では、断熱材の性能が100%出ません。
下の表を見てください。
断熱材の入れ方で、その性能に差が出る事が分かります。

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(断熱材の施工による性能差)
(上から100%の性能発揮、2番目は84%、3番目は45%、4番目では67%に落ちる)

しかし、根気のいるこの仕事を重視する、ハウスメーカーや工務店は皆無です。
対策は、監理により問題点を回避するしか方法が有りません。
また、断熱施工費などを工事予算に計上する考えも必要です。

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(ハウスメーカーの断熱材施工例、改修工事時に発見した断熱施工不良の実態。
土台と断熱材間に隙間がある。電気コンセント、テレビ端子ボックス廻りが断熱材を押し込み隙間が出来る状態。筋交い裏には断熱材が無かった。電気蓄熱ヒーター下地(窓下)が断熱材を押し込み隙間が出来る状態。)


如何せん、施工する側が断熱材に対する知識が不足しているのですから、理解した人(監理者)により正しい施工に導く以外方法が有りません。


次に、重要なのは窓と玄関ドアです。
断熱を強化しても、窓と玄関ドアが脆弱では、熱が逃げてしまいます。
窓性能が低い順に、掲載しますが窓にお金を掛けると、建物全体が生きてきます。
つまり、窓のと玄関ドアの性能が、断熱と同等に重要です。
注釈:(写真下のU値が小さい方が性能が良い窓です。)


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(普及品の樹脂サッシU=2.3W/㎡・K)

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(最新の樹脂サッシU=1.23W/㎡・K)

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(スウェーデン製の木製窓U=1.3W/㎡・K)


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(無暖房住宅PROJECTで採用のノルウェー製の窓U=0.7W/㎡・K)

窓は、実に壁の約10倍近い熱を、逃がしているのです。

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(スウェーデン製の木製断熱ドア断面、インシュレーションボードを中央に挟み、アルミ板とクロス単板等で断面構成されている。窓無しドアでU=1.0W/㎡・K性能)


ですから、窓と玄関ドアの性能をアップしなければ、断熱強化の意味が無くなります。
この点にも、予算配分が必要です。


次に大切なのは、気密です。
建物の気密化は、アナログ作業です。
地道な作業と、先を考えた施工方法を実践するしか有りません。
この作業は、工事監理の上でも重要なポイントです。
気密の程度で、建物の生死が決まります。
そして計画換気にも影響しますので、その理論と実践なしには片手落ちの状態に成りかねません。
ここも重要です。

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(気密施工完了と、気密シートを押さえた、内部壁付加断熱用下地の例)


最後は、換気です。
折角、断熱を強化し、窓・ドアも高性能な製品を採用し、気密も基準値を大きく上回る高性能にしても、この換気を疎かにしては、意味が有りません。
この換気には、コストの少々上乗せを考えて下さい。
コストを掛けなければ、この換気に付いては最良には成りません。
そして、本物を知りえてる人の助言無しには、出来ない事でも有ります。

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(スウェーデンREC社の熱交換換気装置、スウェーデンのパッシブハウスではシェアー90%以上)

以上を踏まえて取組めば、間違いなく今ご検討中の新築建物は、廻りの建物よりも2倍強の性能に成ります。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2010年04月04日|ページの 先頭へ|