2009年5月26日(火)訪問
今回は、ガデリウス社のK氏が、社用で訪問した内容を取材して掲載するものです。
5月26日では、私が訪問した3月5日の現場進捗からは、余り工事は進んでいなかったようです。
その原因は、工事中に施工会社が不況倒産すると言うアクシデントが有り、約1.5ヶ月の間、工事は停止状態と成ったためです。
また、施主であるKarin Adalbart(カーリン アダルバート)さんが開設する、プラスエネルギーハウスサイトも、約1月間閉鎖されていました。
現場入り口にある工事看板。
下には、参画企業名が掲示されています。
外部の様子。
3月5日の訪問からは、余り進捗していない様子です。
外に置いてあった、断熱材は無くなっています。
北面からの写真。
海外のサイトに有った写真から。
殆ど、同時期に撮った写真の様です。
外部から窓廻りを撮った写真です。
窓はエリート社のEXTRMEを採用しています。
玄関ドアと外から見た玄関スペース。
私達が訪問した、3月5日にはリビングのテラスドアから室内に入った記憶が蘇りました。
当時は、玄関には仮設のドアが付いていました。
玄関ドアも正式なドアが付いた様です。
室内でプレゼンテーションするカーリンさん。
内部の断熱材が見える部分がだいぶ少なく成っています。
天井と壁の、断熱と防湿処理の写真。
天井断熱と1階屋根下地が見えます。
手前には、換気ダクトが見えます。
換気ダクトと天井断熱処理。
スウェーデンでは、1、2階間の天井懐間に断熱処理して、階間の遮音を高める処置を行います。
1階にある、アキュミレータータンク。
ソーラー給湯パネルで採熱されこのタンク内熱が供給されます。
このタンク内で加熱され、適温の給湯水として使われます。
アキュミレータータンク設置スペースを囲う間仕切り内の断熱。
アキュミレータータンク本体も断熱されるのですが、タンク内のお湯から出る熱を留める事は出来ません。
その為、設置スペースを取り囲む間仕切りを断熱する事で、室内への熱の拡散を防ぐのです。
しかし、この方策でも夏場では、アキュミレータータンクから出る熱が、室内温度を高める為、余剰湯を捨てタンク内へ差し水を入れ、タンクの温度を下げる処置を取るそうです。
パッシブハウスや無暖房住宅では、冬の対策以上に夏場の対策が重要に成ります。
今回、ガデリウス社の鎌田さんに、質問を届けて頂き、その疑問が解けた一つです。
1階床内に設置されている、排水熱回収管の様子です。
この設備で、排水熱の20%を採取します。
家庭内排水にも熱源が有ります。
大規模な建物では、その排水が大量に出る為、熱を採取する方策が有りますが、戸建住宅等ではその量が少なく、熱採取の効率が悪く捨てるだけでした。
スウェデーンで最初の、リンドース団地プロジャクトの設計者、ハンス・エーク氏に2005年に質問した際も、『200戸以上の建物から出る排水を一まとめに出来れば可能』だと、回答を受けた事が思い出されます。
スウェーデンのパッシブハウスや無暖房住宅の、着実な進化や研究の向上が分かる一こまです。
同じく、排水熱採取装置。
土間床下の断熱材が見えます。
窓廻りの防湿・気密処理。
同じく窓の気密処理テープと釘頭処理状況。
この写真から見ても、厚みと粘着性、弾力性があり、長くその性能が保たれそうです。
2階南面の屋根窓。
遮熱対策は、外部での遮熱方策を取るそうです。
しかし、操作性や吹き抜け部に位置するこの窓には、電動式の外ブラインドの採用だと思われます。
こうした窓の採用には、コストとリスクを念頭に置く必要が有ると思います。
同じく屋根窓とその下部の断熱、防湿・気密処理。
屋根窓は、性能と取り付け上、壁窓よりも処理が難しい現状が有ります。
リンドース団地の無暖房住宅でも南屋根に1台設置されていましたが、夏の排熱用での採用と聞きました。
しかし、その窓U値の低さや断熱処理の難しさから、ハンス・エース氏は、当初採用を熟慮したと答えています。
私は、このプラスエネルギーハウスでも、屋根面窓の是非が検証されると考えています。
2階の特徴ある窓。
私達の訪問時、カーリンさんの説明では、スウェーデンで一番の性能と美しいデザインを考えたと話しています。
この窓も、その現れですが、プラスエネルギー住宅の予測性能値と実際値を見ての判断となりましょうが、窓の構成やサイズからは大きな損失部だと思えます。
こうした窓のサイズ、構成、配置などは、現状の窓性能が壁の約10倍劣る事を考えると、その根拠値よりも安全側に立つ必要が有ると、私は考えています。
真空断熱材のサンプル。
工事中に、何度か表面保護材に穴を開け、真空状態を壊してしまったそうです。
高価な製品なので、カーリンさんは気が気でなかったそうです。
VIP真空断熱材は、価格と施工性、ジョイント処理など課題克服には至っていない様です。
この写真も海外サイトからです。
カーリンさんの後ろ側、曲面壁内にアキミュレータータンクが有ります。
この他にも、BASF社の蓄熱するボードである、PCMスマートボードの採用など現状で可能な製品や工法などを駆使して、スウェデーンのプラスエネルギーハウスは造られています。
こうした試みは、日本の状況から考えると、数十年先を見ている様に思えます。
プラスエネルギーハウスは、スウェデーン省エネハウスに於いて、現在のパッシブハウスや無暖房住宅に変る、新たなランドマークに成ろうとしています。