2009年3月2日(月)
ドイツ、ダルムシュダッド市に有る、パッシブハウス研究所(PHI)を訪問しました。
今回の目的は、日本で建設予定のパッシブハウスを、PHIのPHPPソフトにより、パッシブハウスとして認定を取る為の下打ち合わせを行う事です。
勿論、ドイツに措けるパッシブハウスの現状確認やパッシブハウスの定義を初め、パッシブハウスの発祥地で確認したい事が山ほど有りました。
AM9:30から、PHI会議室で、担当のSusanne Theumer(ズザネ トイマー)建築士、エネルギーコンサルタント、Juergen Schnieders(ユルゲン シュニーダス)物理学者の二人が出迎えてくれました。
(左側がズザネ トイマーさん、右側がユルゲン シュにーダスさんです。)
Juergen Schnieders(ユルゲン シュニーダス)さんが、パッシブハウス研究所(PHI)と、パッシブハウスの定義他に付いて、プレゼンテーションを行って頂きました。
通訳は、ドイツから日本に嫁がれた、クーラー・アンドレアさんが担当しました。
クーラーさんは、日本パッシブハウスセンターに加わり、ドイツ、パッシブハウス研究所のパッシブハウス認証ソフトである、PHPPソフトを使える数少ない日本在住人です。
【ここから、プレゼン内容】
(Ⅰ)
主たる業務は、①パッシブハウスの基準策定、パッシブハウスに措いてのコスト、経済性、設計原則、今後の方向性などに付いて。
②エネルギーの高効率関する、品質、研究、解決策などに付いて。
③部材、建材の品質保証などに付いて。
また、PHIには3つのユニットがあり、
①:PHIは、リサーチを行う部門。
②:PHD(サービス)は、認証、コンサルティング、トレーニングを行う部門。
③:IGは、研究開発、データベース、出版などを行う部門。毎年11月の第一週にはパッシブハウスのオープンハウスイベントを行っている。
(Ⅱ)
1991年ウォルガング・ファイスト博士は、ダルムシュダッド市に、ドイツ初のパッシブハウスを建設しました。
パッシブハウス研究所(PHI)は、1995年ここダルムシュダッド市に、ウォルガング・ファイスト博士により開設されました。
現在ドイツ国内には、PHIのPHPPソフトによる計算で建てられた、約10000棟のパッシブハウスが有ります。
(Ⅲ)
ウォルガング・ファイスト博士
(Ⅳ)
パッシブハウスには重要な5つのポイントが有ります。
それは、建物に今までも普通に有った部分の改善で行います。
(Ⅴ)
5つのポイントは、
①:床、壁、屋根のU値≦0.15W/㎡・kとする事。
②:サーマルブリッジ(熱橋)は、ψ値≦0.01W/m・kとする事。
③:窓は三層ガラスU値≦0.80W/㎡・kとする事。
④:気密性能はPa50≦0.6/hとする事。
⑤:換気は熱交換換気とし、その熱回収率は75%以上とする事。
(Ⅵ)
左側:室内温度+21.0℃ 窓表面温度+9.0℃ 外気温度-12.0℃
右側:室内温度+21.0℃ 窓表面温度+17.0℃ 外気温度-12.0℃
床、壁、屋根の断熱性能も大切だが、窓の性能も、熱交換換気装置の性能も大切です。
そした、総合的な状況下で、室温の確保が可能と成ります。
(Ⅶ)
パッシブハウスに住む、150人からのアンケート結果。
夏、冬シーズンでの満足度調査では、VeryGoodとGoodと回答した人が、夏90%、冬97%と殆どの入居者が満足度が高い事を示しています。
パッシブハウスは、夏でも冬でも快適である事が、アンケートからも分かります。
(Ⅷ)
左上:外断熱材を施工は、厚い断熱材に、接着材を4方に付け、空気が入らない様に施工する。
左下:窓周りの気密処理は重要なポイント。
右上:バルコニー部などの熱橋対策が重要。
右下:換気装置のダクト配管では遮音性も重要、また十分な保温などの為に、配管スペース確保。
(Ⅸ)
パッシブハウスのコストに付いて。
断熱に係るコストが一番高い。(左から2番目のグラフ)
その右側、気密、窓、換気の順で、右端がトータルコスト。
気密、窓のコストとエネルギー効果は余り高くない、また、換気はエネルギー効果よりも、コストの方が高く、余りメリットが無い様に見える。
しかし、この4つの項目は、相乗効果を生むものであり、どれが欠けてもバランスを失い、効果が激減しその他の項目の意味が無くなる。
パッシブハウスは、そうしたものです。
(Ⅹ)
①フランクフルト市では、公共の建物は全てパッシブハウスとしなければ成らないと言う、条例を出した。
②オーストリアのある地域の町営住宅は、パッシブハウスで建てられています。
③EUでは、2015年から全ての新築建物を、パッシブハウスで建てなくては成らない法律を検討中です。
(XI)
ハノーバー市にある、32戸のパッシブハウスで使われる、電力はこの3基の風力発電量と同じです。
もし、32戸のパッシブハウスが普通の家で造られていたら、15基の風力発電器が必要でした。
以上がプレゼンテーションの内容です。
重要なポイントと、深みの有る言葉が幾つも有りました。
私が感じたのは、EUや北欧諸国では、もうパッシブハウスは特殊な建物ではなく、公共の建物を初め、消費者が望めば手の届く、ごく普通の建物に成っていると言う事です。
そして、建物のパッシブ化は今後のエネルギー問題や環境問題を直視した時、用いなければ成らない建築上不可欠な方策と言えると言う事です。
その現状や状況を知るに付け、その手立てを施さず、旧態的にスクラップ&ビルドを続ける様な住い造りは、罪悪以外の何者でも無い様に思えるのです。
費用対効果を言う割には、短い耐用年数の建物を見ると、結果的に費用対効果を悪くしているのが現状の建物のです。
その現実に気が付く事が、後悔の念を擁かない建物造りに成ると考えます。
その手本が、EUや北欧諸国のパッシブハウスではないでしょうか。
パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2009年04月06日|ページの 先頭へ|