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便利な国と不便な国

2008年3月30日~4月5日までスウェーデンを視察しました。
今回で4度目の視察です。
こんなにも、スウェーデンを訪問する事になるとは、自分でも驚きです。

スウェーデンでは、毎回新しい発見をします。
今回も、いろいろな発見が有りましたが、毎回感じるのは日本の便利さと相反するスウェーデンの不便さです。


まず、日本では、外出中にトイレの心配がいりません。
町を歩いていて、トイレの使用に事欠かない事が、当たり前に考えている日本の生活は、スウェーデンでは通用しません。
スウェーデンには、無料の公衆トイレを見た事が有りません。
人通りの多い場所に有ったトイレは、有料トイレでした。
しかも、この有料トイレは限られた場所にしか有りません。


ストックホルム市内の有料トイレ。
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今回の視察で行った、ヨーテボリ市の中央駅地下にあるトイレも、有料(5スウエーデンクローネ=約90円)でした。
ドアには有料の記載があり、ドアを開けて中に入ると、トイレスペースの前に、料金を徴収する人が窓越しにいてお金を渡してからトイレスペースに入ります。
トイレスペースは特段清掃が行き届いた感じはしませんが、程ほどの衛生状態です。
視察先の、郊外のドライブインでもトイレは有料でした。


視察中に立ち寄った、ドライブインの店内の様子。
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その店内のトイレドアには、5クローネの料金表示が有った。
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スウェーデンでは、店舗で買い物をする事や、レストランなどに入り食事をする事で、内部のトイレが使用できるのです。
ですから視察中も、常にトイレのある場所で、用をすませる習慣性が必要と成ります。


また、スウェーデンでは、レストランでの飲料水の提供が有りません。
日本のレストランでは、席に着くとおしぼりや飲料水が、当然の様に出てきます。
スウェーデンでは、水は売り物との考えが有り、注文して始めて出てきます。
おしぼりなどを、出すレストランは僅かです。

また、あるレストランでは、クローク係りに10クローネ(約180円)の支払いを要求された事が有ります。
サービスは有料なのです。


今回の視察で汽車に乗ると、車内放送の少ない事に気が付きました。
スウェーデンの地下鉄などでは、電光掲示と車内放送で次の駅名が分かりますが、地上を走る他の列車では駅名などは1度位の放送で、日本の様に繰り返し告げられませんでした。
外の景色が見えるので、自分で確認しなさいと言う考えでしょうか?
列車内での放送が、大変少ないのです。


2008年4月2日に乗った、ヨーテボリ市からストックホルム市に向かうX2000列車(高速列車)では、4月からサマータイムで1時間早まった時刻が、車内の電光掲示に旧時刻で表示されていました。


列車内での、1時間遅れの時刻表示。
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日本では有り得ない事ですが、ここでは正確性もない様です。
日頃の、当たり前の便利さが、スウェーデンには有りませんでした。


スウェーデン国内を飛ぶ、空の便、スカンジナビア航空ではも、殆んど機内放送が有りません。
飛立つ前も、電子音が2~3度鳴らす程度で、注意放送が無い事が有ります。


こうして見ると、日本の便利さは、過剰に思えてきます。
その便利さに慣れた状態で、海外に行くとその差に驚き、有る時は失敗したり不便さを感じます。
でも考えてみると、日本の便利さには、一人ひとりの金銭負担が有るのです。


例えば、公衆トイレの建設費と維持費は、税金からの負担です。
おしぼりや飲料水も、不要な人には、無駄な料金の上乗せです。


航空機機内雑誌なども、日本では常に真新しい物ですが、海外では長い間使われた物が置かれています。
補充製品のストック率でも、相当コストが掛ります。
スカンジナビア航空の膝掛けは、使用回数の多い、薄い生地の物でした。
また、着陸が近づくと、乗客各人に膝掛けをたたんで、シートボックスに入れる様、指示されます。
客扱いがキツイ様に思えますが、一時期の利用に掛ける金額負担が、少なくなる手段と思えば我慢の範囲です。
こうした事柄は、常識的判断は各個人の責任範囲といった考えが根底にある様に思えます。
こうした中、工事現場の様子も、日本とは相当違います。


ヨーテボリ市内の、ショッピングモール入り口前に立つ、工事用クレーン。
この下を、買い物客は通行している。
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この様な現場状態は、日本には無いと思います。
万が一の場合、だれがどの様に責任を取るのか、聞いてみたいものです。
自己責任の極みが、この写真の風景ではないでしょか。


便利な社会は、生きていく上では大変都合の良い事です。
しかし、便利さを保つ事は、大きな費用負担が伴う事を考えなくては成りません。
日本は今の便利さを保つ事が、いつまで続ける事が出来るでしょうか。


現状を見ると、福祉政策や弱者救済をも閉ざしながら、便利さを続けいる様に見えます。
それは、私達にとって本当に良い事なのでしょうか。
スウェーデンの不便さや、自己責任を重視する社会構成を見ると、限られた予算の中で、子供から老人までが一の社会で一緒に生きていくには、便利さと不便さの区分けが必要である事が分かります。


この不便さや自己責任の社会構成が、成熟された社会であるとすれば、日本がその領域までに達するには、私達自身も相当の覚悟がいる感じがします。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2008年06月11日|ページの 先頭へ|