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安全と省エネの狭間

スウェーデンの省エネサイトを廻っている時、こんな写真が目に入りました。
断熱性の良い、公共建物などに付いているドアのカタログでした。

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右上に、子供の写真を載せ、その下にはドア枠に手を挟んだ絵が、載っています。
この写真から分かる様に、子供が手を挟んでも大怪我にはならに処置を施した、製品を強調しているのです。
私はこの写真を見た時、思い出した事が有ります。


2004年3月26日に、発生した事故、六本木ヒルズ回転ドア事故です。

2006年(平成18年)5月5日に、NHKテレビで放送された、『六本木ヒルズ回転ドア事故の原因とそこに潜む日本の建築問題』を、再放送を含め2回見た。
内容を少し要約します。


2004年3月26日事故発生
3.15回/分の速さで、ドアは回転していた。
事故の挟まれ衝撃は、847kgの強さで、通常子供の頭の骨は、100kgで折れる。


一人の死亡は、200数十件の事故例が存在する。
一人の死亡 ⇒ 110人の入院 ⇒ 6200人の外来(病院統計)
この六本木ヒルズ回転ドアでは、ビル開業以来過去にも32件の事故が起きている。
その教訓は生かされず、この重大事故を招いている。


この回転ドアは、天井車輪方式に改造していた。
ドアの隙間は、通常4cmだが、回転を早くし、総重量を重くした六本木ヒルズの回転ドアは、障害物を挟むと回転ドアはセリ上がり9cmまで広がる事が実証実験で判明した。

回転ドアの原型はオランダ製で、その材質はアルミ製だったが、アルミ下地を鉄に変更していた。
(重量が重くなる)

更に、六本木ヒルズの回転ドアは、ステンレス仕様に変更しその結果2.7tの総重量に成り、ストップセンサーが作動しても、約30~40cm止まらない状態に成っていた。
良い物を取り入れても、都合の良い様に判断して、本来必要な部分を切り捨ててしまう考えがそこに有った。


事故の有った六本木ヒルズビル
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ヨーロッパの回転ドアは、アルミ製で重量が1t以内である。
軽いので、ストップが効く。
人間の肩が挟まった場合70kg、頭で40kgの衝撃で止まる。
また、緩衝材と気密用に、ゴムが付いている。(正しく、今回のドアの写真がその実例である)


オランダから技術導入した際は、本体はアルミ製でモーターは天井で吊られている為、モーター自重はドアの重量に加算されない様に成っていた。
日本で1号機を製作した際、ドアをステンレス製にして1.2tの重量に成った。
この際、駆動モーターが重量に耐え切れず、異常音が出てクレームと成った。
その為、外周駆動方式に変更し、モーターが増え、そのモーター重量も総重量に加算される形に変えた。(田島順三製作所が倒産しオランダの回転ドアメーカーが手を引く)
田島順三製作所は、三和シャッターに吸収され、三和タジマと名前を改める。


大型回転ドアに対し、ドアが歪むため鉄下地にステンレス仕上げに変える。
この時、総重量が2.7tになる。(センサーで防止出来ると判断したと、三和タジマの製作担当が話していた)


制御で安全確保する考えが有った様だが、これは日本的考えで、問題発生時の言い訳に出てくる言葉だが、制御での安全確保は完璧では無い。

つまり、本来重要な安全停止は、ドア重量が基準と成るが、その総重量が増す形を採用し、重量に合う駆動装置で加速する無謀な方策を取ったのだ。
結果、子供がドアに挟まれても、ドアは止まらず、子供の命を奪ったのである。
建物の用途上、不特定多数の人々が利用する事を知りながら、その安全を脅かす様なモノ造りは、本末転倒の行為である。
しかし、日本の中心に建つ、ランドマークの建物は、その異様な形と同様に、子供に牙を向けたのです。


テレビでは、諸外国の建築上の安全に付いても触れています。
スチールドアの吊り元での衝撃は、600kgもある。
オーストラリアでは、子供の事故に対するデータベース化が進んでいる。
コンセントカバー、ドア吊り元カバー、ドア緩衝材の取付けなど、データが生かされている。
日本では、この様な安全対策協議は、聞いた事が有りません。


この事件後、全国から回転ドアを撤去する行動が措き、回転ドアは激減しました。
しかし、回転ドアは外部からの、ドラフト現象を防ぐのに有効です。(省エネ効果が大きい)
六本木ヒルズ回転ドア事故は、本来の回転ドアの目的や効用を無視して、見てくれ重視の改良を重ねた結果が招いた事故である。
この事件では、製造メーカーが法的制裁を受けた様だが、その罪も軽いし、遺族への補償も低いだろう。
また、このビルの総合施工会社、設計事務所、ビルの持ち主に対しては、その罪を問えない日本の法律の様である。
特に、設計者の責任は重いと考えるが、発注先と受注先の力関係で、有耶無耶にされたのだろう。


日本のランドマークビルも、驕りの産物でしかなかった例です。
しかし、回転ドアが悪い様なイメージで、そのドアの内容変更はあまり表に出なかった。
私も、NHKで特番を組まない限り、真実を知る事は無かったでしょう。


スウェーデンなどでは、回転ドアを良く見かけます。
その材質は、アルミ製です。


ストックホルム市内のデパートの回転ドア
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同じくストックホルム市内の店舗の回転ドア
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安全性からも、スウェーデンでは、それをステンレスに変えたり、機能を変える事は無いでしょう。
日本の建物は、自動ドアが殆んどで、その隙間の多さには、省エネ効果は期待出来ない造りです。
省エネビルの必要性が叫ばれるこの時期に、回転ドアを見直す切っ掛けに成ってほしいと、私は考えています。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2008年03月08日|ページの 先頭へ|