【知ってる人は、高断熱、外断熱】
皆さん、ご存知ですか?
建築学を教える大学教授の自宅は、鉄筋コンクリート造又は組積造では、壁断熱100~200㎜の外断熱工法を採用し、木造では、壁断熱200~300㎜以上の高断熱化された住いである事を。
それは、理論的、学術的に、そこまでの断熱材無しには、快適、高耐久な住居にはならない事を知っているからです。
では、一般的に普及している住宅は、そこまでの断熱化はされているのでしょうか?
いいえ、成されていません。
普及している戸建、共同住宅では、鉄筋コンクリート造、組積造では、内壁断熱工法のウレタン吹き付け30~50mm厚位が普通ですし、木造では100~130㎜厚の壁断熱が大方を占め、次世代省エネの断熱基準でも、壁断熱厚さは、140~150㎜程です。
何故、日本の鉄筋コンクリート造又は組積造の建物では、外断熱化が図られないのでしょうか。
諸外国では、鉄筋コンクリート造又は組積造、鉄骨造は、外断熱工法が主流です。
理論上も、鉄筋コンクリート造、組積造、鉄骨造における、外断熱工法の有利性は明らかに成っています。
しかし、日本では一向に外断熱化が進みません。
NPO組織である外断熱推進会議や断熱材メーカー等が、盛んに鉄筋コンクリート造、組積造、鉄骨造の外断熱の有利性をアピールしていますが、建設業界内での採用組は少数です。
でも、本当の事を知っている大学教授や一部の建築関係者達は、鉄筋コンクリート造、組積造、鉄骨造建物には、外断熱を採用します。
また、一部の知識人や、その情報を知る得た人達だけが、外断熱工法を採用し、その良好な結果を満喫しています。
東京に建つ、大学教授の自宅。
20年も前から、外断熱工法で建てられています。
北海道の、大学教授の自邸(木造)の例です。
高断熱化と、各種の試みが行われています。
日本は、工業先進国、経済大国を自負し、その中で各産業分野での省エネ技術は、世界の国々からも一目措かれています。
なのに、住いの鉄筋コンクリート造、組積造、鉄骨造住居に措いて、理論的常識である外断熱工法が、日本では特殊な工法とされています。
そんな日本の現状を、外断熱が定着しているヨーロッパや北欧諸国では、奇異な事として見ています。
鉄筋コンクリート造、組積造、鉄骨造住居には、外断熱工法以外で良好な住空間は、形成されません。
もう一つ、木造住宅に措ける断熱材厚さにも、違いが出ています。
鉄筋コンクリート造の様に、蓄熱効果が得られない木造住宅において、断熱材の厚さ確保は、熱損失を補う上で大変重要です。
寒冷地北海道の、道南、道央、道東、道北などの広い地域では、気象条件が大きく違います。
しかし、次世代省エネ基準では、単にⅠ地区指定され、道内全てが同じ断熱材厚さで、基準値化されています。
つまり、次世代省エネ基準は、各地区の気象条件を考慮した、断熱基準厚さとは言えないと考えます。
2007年1月、厳しい寒さの、旭川効外の朝。
この日、札幌は-7℃でしたが、ここでは更に厳しい寒さで-17℃と、-10℃の気温差が有りました。
スウェーデンでは、1990年から木造住宅の壁断熱材厚さは270㎜厚さで、スウェーデ全土の断熱厚さ基準値としています。
スウェーデン・ルンド大学、建築物理学部でのレクチュアから。
スウェーデンでは、1990年から壁の断熱厚さは、270㎜と決められています。
このスウェーデンの壁断熱材の厚さは、北海道の高断熱住宅と呼ばれる新築建物の、2倍~3倍の断熱材厚さです。
また、防湿層の施工も、理論を忠実に守り、徹底した施工が成されています。
窓、ドアなど外部との遮熱住器の性能も、北海道で販売されている物よりも、高性能です。
換気設備も、道内では一般的な、第三種換気方式(自然給気で機械排気)ではなく、第1種換気方式(機械給気で機械排気)に変わりつつあり、しかも高性能な熱交換型の換気装置が販売されています。
熱交換換気装置は、スウェーデンでも普及はこれからと聞きましたが、消費者が望めば、高性能な熱交換換気装置が、手に入る状況である事は、日本と大きく異なる事です。
日本の換気メーカーが、市販している熱交換換気装置は熱交換部分が小さく、熱交換率はメーカー公表数値を、満足出来る様には思えません。
また、フィルターの性能も貧弱で、スウェーデンの物とは、比べ物には成りません。
私は、北海道の木造建物は、断熱材厚さ100~150㎜の2倍以上とし、ドア・窓の性能もステップアップする必要が有ると考えます。
しかし、現在廻りに建つ建物は、脆弱な断熱施工の物しか有りません。
消費者の方々は、余程ラッキーな巡り合わせが内限り、建築学の大学教授が住む様な建物には、巡り会う事は有りません。
スウェーデンのマイホームセンターを視察した際、その展示建物が、全て北海道で現在新築されている建物よりも、性能や品質の面で数段上である事を、目の当たりにしました。
建築に携わる者として、その差に驚き、北海道の現状建物を情けなく思いました。
北海道に措いても、人生の基盤と成る住宅が、ごく普通に選んで快適な性能である事が、当たり前でなければならないと思います。
今、建築業界が、正しい情報を得て、それを消費者に正しく発信する、必要性を強く感じます。
【日本の建築には無い専門学】
それは、建築物理学と言う学問です。
『建築物理学』の言葉は、日本では馴染みのない言葉ですが、ドイツをはじめとするヨーロッパや北欧諸国では、建築物理学の専門家と共同で建築物を設計・施工監理しています。
日本では1級建築士が、万能の技術者として認識されていますが、諸外国では、デザイナー、構造、建築物理、設備などの各部門の専門技術者が、建物の設計や監理に関わります。
しかし、日本では建築物理学の専門分野が無く、おのずと建築における片手落ちの状態が現状には有ります。
結露やカビの原因と対策、換気の意味と必要性、熱交換換気扇の開発・普及など、建築物理学が関わりあう分野は、現在日本ではなおざり状態に有ります。
建築物理とは、建築物における様々な物理現象を解明し、実証的に活用する為の有効な手立てをする学問です。
【世界の建築物理学者】
スウェーデン・ルンド大学元教授、アーネ・エルムロート博士。
スウェーデン・チャルマシュ工科大学
左側が、カール・エリック・ハーゲントフト教授。
真ん中は、無暖房住宅の設計者ハンス・エーク氏。
ドイツの建築物理学研究所
フラウンホーファー研究所の研究施設。
右から、フラウンホーファー研究所・ゼトルバウアー所長とキュンツエル博士。
その隣は、日本の建築物理学の第一人者田中辰明先生。
建築物理の領域
•騒音・音響
•光・照明
•熱・エネルギー
•室内気候
•居住環境汚染(化学物質・微生物)
•建築物劣化・歴史的建築物の保存
近年日本でも、省エネルギー、CO2削減対策として断熱材の有効性が認識されています。
断熱は、建築物理のほとんどの領域にかかわる重要な要素です。
正しい建築物理の知識に基づく建物は、持続可能な社会基盤を造ります。
建築を専攻する大学教授や一部の建築関係者は、建築物理学を知っていて、自宅を建てていると考えると、『知ってる人は、高断熱、外断熱』の意味がお分かり頂けると思います。