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スウェーデンと日本の違い(5)

スウェーデンでは、移民者に対し手厚い支援を、行っていると聞きます。
移民に付いては、専門分野外なので、建築関連の一部に付いて紹介します。

ストックホルム市の住宅局で、移民者が多く住む地区の、建築リノベーションに付いて聞きました。


ストックホルム市内にある、住宅局と局にお勤めの、シモン・忍さんです。

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永い年月で、建物の老朽化が進み、国の断熱基準のレベルアップに伴い、建物を含め地域全体の、リノベーションが、必要に成ってきたと説明されました。

その中で特に注目する言葉は、『粗悪な建物や街に住んでいると、犯罪率のアップや人間荒廃が始まる。建物や街の整備は、社会資本の整備以外にも、人としての尊厳を保たせる意味もある。』と言う言葉でした。

一部の、有利な立場にある人達が住む建物や、地域を優先するのではなく、底辺の充実やレベルを上げる方に、資本を投入すると言うスウェーデンの考え方です。
この様な考え方にも、日本との違いを感じました。


住宅局の説明を受けた後、リノベーション地区を視察しました。


リノベーション地区の建物です。

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ベランダ式の旧建物では、ベランダからの熱橋(ヒートブリッジ)や、窓、ドアなどの開口部の性能が悪い為、改修で住環境の改善を図るそうです。


この写真の様な、ベランダと本建屋が連続した建物は、日本にも沢山有る建物です。
ベランダからの、熱橋(ヒートブリッジ)対策や、断熱材厚さ不足、窓、ドアなどの開口部を、性能の良い部材に取り替える工事に着手します。

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熱橋(ヒートブリッジ)の件や、開口部の性能、外断熱への改修は、日本では取組まれていない内容です。
何故、同じ視野で、建物の改善に手が付けられないのか、このリノベーションは、日本に取って大いに参考となるものです。


当時は、最新式の交通システムであった、車道と歩道を完全に分離させた方式は、過去の遺物と成り、今回のリノベーションでは、車道と歩道を、同じ高さに戻すそうです。

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一部の建物では、工事が始まっていました。

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妻壁とベランダの断熱改修です。


妻壁とベランダの工事風景です。

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EPS断熱材を外壁に施工していました。


足場の隙間から見えたベランダの痛み具合です。

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良く見ると、ベランダ先のコンクリートが落ちて、鉄筋が見えています。
日本では、取り壊しか、建物ごと解体の手段を取るでしょうが、スウェーデンではなかなか、解体取り壊しの処置は取りません。
壊れるまで使うのが、スウェーデン流です。


リノベーションを待つ建物を覗いて見ました。


写真は、共用玄関です。

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やはり、都心と違い、建物廻りにゴミが散乱していたり、玄関前に犬の糞も、処理されずにある様なありさまです。


でもそんな古く、低所得者が住む共同住宅でも、暖房に付いては日本の高級マンションよりも、充実しています。


ご覧の様に、共用玄関の入り口には、暖房パネルヒーターが設置されています。

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団地開発時期から、暖房の設置は、当然の事だったのです。
ストックホルム市住宅局の言う、低い断熱性能につても、日本の団地から比べると、そのレベルは高い事でしょう。


最低の、レベルと言われるこの団地の建物でも、共用部に暖房設備がある事は、共用部に暖房設備の無い日本の建物は、スウェーデンの、最低レベルより劣っていると言う事です。

この差が、『スウェーデンと日本の違い』なのです。
現在も、劣悪、短命で、必要な装備しない建物を、日本の基準として、盛んに造り続ける事は、正しく大きな無駄使いと、言わなくては成りません。


団地内の駐車場です。

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住宅棟2棟の間に、上は緑地広場に成っているのか、地下風の駐車場です。
この写真で訴えたい事は、入り口の折り戸は自動ドアですが、そのドアに付いている大きな気密ゴムです。


どんな内部空間でも、外部のとの遮断を心掛けています。
この内側と外側の遮断が、『スウェーデンと日本の違い』なのです。
曖昧なエリアは造らない、スウェーデンではそう感じました。


リノベーション地区を離れ、ストックホルムの都心に戻り、次の視察先に向かいます。


逆光の写真で、見えにくいと思いますが、スカンジナビア最大の建材センターです。
(日本のホームセンターにあたります。)

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この店内には、建築関連の商品が殆んど揃っています。
一般消費者が、自宅のリフォームための材料を購入できます。


店内の様子と展示されていた昔の工具。

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また、ガラスの写真です。
この建材センターの、エレベーターホールの窓ガラスです。

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ホールには、暖房設備は有りませんでしたが、天井から床まである外部との仕切り建具には、ペアガラスが入っていました。
日本のショッピングセンターには、有り得ない事です。


ストックホルム市内のショッピングセンターにある、回転ドアです。

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大きな回転ドアは、ゆっくりと廻っていました。
安全と、機能を発揮する為には、不要なスピードやステンレスで囲う様な、見てくれは不要です。
建物内部からの、熱の流失を最低限にするため、活躍していました。


別なビルの、回転ドアと一般ドアです。

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利用の、多き時などの使い分けでしょか。
ドアも、気密ゴムが付き、確りとした造りです。
ガラスは、勿論ペアガラスでした。


ストックホルム市の、宿泊先ホテル前に有った、集合住宅です。
かなり、古めかしい建物でした。

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共用玄関にある、オートロックと入居者の表札です。

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ガラス越しに中を見ると、やはり有りました、暖房パネルです。
この様に、スウェーデンの建物は、共用スペースも暖房エリアです。

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内外が、はっきりしている建物は、維持管理もしっかり出来ます。
入居者の、建物に対する考え方も、変わります。
一番重要な事は、建物本来の目的が、明確に成ります。
住む人達に取って、良い状況がそこに有ります。


ストックホルム市にある、アーランダ国際空港の暖房設備です。

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床下にスチーム系の暖房設備が入っています。
その上に、グレーチングで蓋をしたものです。
窓際まで寄れるし、暖房器が見えないのでスッキリします。
多分、床のコンクリートは、分厚く蓄熱効果もあるのでよう。


同じく窓ガラスです。

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勿論、エアー層12㎜のペアガラスです。


日本の空港との比較で、羽田空港第二ターミナルのガラスです。
エアー層6㎜のペアガラスでした。

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漸く、北海道以外の空港でも、ペアガラスの採用が、行われる様になったのかと思いました。
しかし、天井まで覆う、曲面ガラスでは、夏の日差し対策無しには、建物内は灼熱の熱さではないでしょか。
また、冬場には、大きな熱損失と成ります。


外にあるのは、メンテナンス用の、足場の様です。
日差しは、内側に付いている、収納式のブラインドで防ぐ、考えの様です。


でも、それでは、日射熱の70%以上を、内部に取り込んでしまいます。
こうした事柄は、空港設計を行った設計者は、良く知っている事だと思います。
何故、手立てを講じた設計にしないのでしょうか。

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これらには、大きなエネルギーで、対抗する事に成ります。
デザインや、眺望の良さも大切ですが、力任せのエネルギー対策は、永い維持管理費に大きな出費を生みます。


3月23日の、羽田第二ターミナルの出発ロビーも、曲面ガラスの大きなアトリューム風広場は、強い日差しのため、30℃近くの温度だったと思います。
これを冷やす為に、また大きなエネルギーを使う事を、空港管理者達は、知っていて造ったとは思えません。
何故ならば、その試算をしてみれば、とんでもない金額に成るからです。
『こんなに、維持費の掛る建物は困る』と、事態を知っていれば、設計も変更されたかもしれません。
建物の維持管理費は、建設前に試算ていなければ、大きな出費に成ってしまいます。


別な視点ですが、北海道内にも、外断熱マンションが有ります。
しかしその中でも、共用玄関ホールなどに、暖房機器が置かれていない、外断熱マンションも有ります。


日本の外断熱マンションには、暖房機器の無い、共用ホールと廊下が存在します。

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外断熱の意味を考え、建物外郭で断熱するのであれば、断熱材の内側は全て暖房範囲と考えるべきだと思います。


折角、海外の外断熱を真似したのであれば、暖房エリアの真似もしてほしいものです。
片手落ちの真似事で、建築物が建てられていく事は、中途半端な性能を持つ建物が、建てられていく事に成ります。
やがては、そうした片手落ちの物造りが、正しい工法でも、中途半端な工法として、評価されるおそれが有る事を心配します。


もっと、私達がその無駄や矛盾を、指摘していかなければ、これらは改善されないでしょう。
『スウェーデンと日本の違い』に気付く事は、日本を住みやすくする為のヒントに、気付く事だと考えています。


『スウェーデンと日本の違い』 終り。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2007年03月16日|ページの 先頭へ|