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断熱材の施工不良

札幌市内の住宅で、冬季間長期不在中に水道の凍結事故があり、1階の床下を水浸しにした為、床の改修工事に付いての調査依頼を受けました。
この住宅は、北海道の有名ハウスメーカーの施工でした。
また、最近流行のオール電化住宅を謳い、施主もその魅力で購入したそうです。
ところが、壁の下部と床下断熱材の取替えのため、解体した処、断熱材の施工不良を発見しました。

断熱材厚さは、北海道ではまだ標準的な断熱厚、壁100㎜、床下150㎜でした。
標準的な断熱厚さとは言え、北海道の寒さに取っては充分な断熱材厚さと言えない状態に、施工不良があると寒冷地住宅として、大きな欠陥が有る事に成ります。

施主も入居時から、足元が寒く電力消費も予想よりも多く、疑問を持っていたそうです。
また、長期不在でも水道管の凍結により、管が破れる事は予測していなかったそうです。
断熱不足が、水道管の破損に直接影響したかは特定できませんが、室内エネルギーを外部へ、無駄に放出していた事は、間違い有りません。

その問題部分を、写真で紹介していきます。


下の写真は、断熱材の破材継ぎ足しによる、作業状況写真です。
断熱材をカットし残った破材を、継ぎ足しても100%の効果が出ません。
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下の写真は、断熱材の表面を気流が走り、汚れた状況です。
断熱材が大きくすぎてシワが出来、気流が流れやすくなったのです。
また、床部分の黒く写っている部分は、断熱材が入っていない所です。
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下の写真は、窓下の断熱材状況です。
暖房パネル固定用の木下地材で、断熱材が押され隙間が出来ていました。
断熱材を丁寧に入れても、後仕事で断熱効果を弱める、悪い例です。
工事監理の必要性は、こんな点にも有ります。
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下の写真は、電気コンセントボックと配線状態です。
断熱材が100mmの効果を出すには、100㎜厚の形状を保っ事が必要です。
電気ボックと電線で、100㎜の断熱材が、押し込められて、形状を保っていません。
つまり、100㎜断熱の効果が発揮出来ません。
この事で、断熱性能が何割ダウンに成るか、ご存知ですか?

配線とコンセントボックスで、断熱材100㎜厚さが押し込められる状況です。
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断熱材の施工精度による性能低下率(北海道建築講座資料より)
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ご覧の様に、断熱材は厚さ通りの性能を出すには、丁寧な施工が必要です。
折角コストを掛けて購入した断熱材が、100%の性能を発揮する事が、出来ていないのが現状です。

電気のコンセントボックスの裏面では、断熱厚さ100㎜が確保できません。
ボックスの裏は、断熱材が疎かに成り、断熱厚さも約50㎜程度にしか確保出来ません。

必然的に断熱不足が、コンセントやスイッチボックスの裏で起っているのです。
また構造木材は、断熱材よりも熱を3倍通し易い事も、知っておく必要が有ります。
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下の写真の様に、この現場では床断熱受けは、ネットで施工していました。
しかし、ネットでは断熱材が水平に入りません。
職人が行なっても、素人が行なっても、大差は有りません。
だれが行なっても、上手く出来る工事方法が、設計のポイントです。
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下の写真は、外壁隅部の壁と床部分の、取り合い断熱状況です。
壁断熱材が、土台に届いていません。
この様に、断熱材と構造木材の間に隙間あれば、断熱の効果は出ません。
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下の写真は、上記部分の拡大写真です。
土台と壁断熱材が、30㎜程開いています。
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この部分は、無断熱状態です。
どんなに、他の部分の断熱と気密を良くしても、外壁部分がこんなに開いていては、高断熱と高気密とは成りません。
また、高断熱・高気密で建物の性能が上がって行くと、こうした欠陥部分の影響が大きく成ります。


下の写真は、別な外壁部分の土台と壁断熱の隙間です。
どんな仕事でも、最後が大切です。
取り合い部の、端部処理がこれでは、断熱施工としては落第です。
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下の写真は、外壁端部の筋違い部分です。
逆三角の断熱材が押し込められた状態で、入れられています。
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前の表の様に、断熱材が押し込められると、断熱効果は半減してしまいます。
また、筋違いの裏には、断熱材が入っていませんでした。
筋違い部分は、無断熱状態で大きな熱損失部分に成っていました。
この施工は、明らかな手抜き工事です。


下の写真は、電気配線も断熱材の性能を、落とす原因になる事が分かる写真です。
電気配線をした後に、配線の後にカッターで、切れ目を入れて配線を、断熱材の中に入れる様にしなければ、電気配線で断熱材が、押し込められる状態に成り、断熱効果が落ちます。
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下の写真も、外壁断熱状態です。
この部分も、土台と断熱材の取り合いが、全て開いています。
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これでは、断熱効果が有りません。
電気とTV配線等で、断熱材が押されている状態が、良く分かります。
配線の多い場合は、配管方式の方が良いと思います。


下の写真は、壁隅部の断熱状態です。
断熱材が、木下地の表面まで達していません。
つまり、断熱材と建材の間に、隙間が出来ることに成ります。
そこを気流が走り、写真左側の様に、黒く汚れが残ります。
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下の写真は、床取り合い部分に、断熱材が無い状態を写したものです。
手抜きと言える状態です。
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これでは、オール電化住宅と謳う以前の、問題です。
見えなくなる部分は、こうして将来に亘って、闇の中と成ります。
監理の重要性は、こんな事を見逃しません。


下の写真は、在来工法の壁隅部分の、複雑な状態を示したものです。
こんな様な箇所に、断熱材を入れても、上手く入りません。
どんなに、丁寧に作業しても入りません。
また、100㎜の断熱材は、金物の裏までは入れれません。
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下の写真は、同じく壁隅部分の写真です。
斜め部材の、筋違いの裏には100㎜厚の断熱材は、そのまま入れられません。
ですから、100㎜断熱では、こうした部分は50㎜断熱にしか成りません。
断熱の方法を、変えなければ解決できません。
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下の写真は、在来工法の複雑な状況を示したモノです。
この様な部分を、丁寧に作業するほど、工事予算は有りません。
また、断熱材施工費用は、大工工事予算に明確に示されていません。
予算の中身も、良く検討する必要が有ります。
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以上、紹介した写真は、改修工事中に発見した断熱不良部分を公開すると事で、消費者の皆さんに断熱工事の重要さを提起して、将来欠陥住宅等に合う事が無い様にして頂く事を目的としています。
また、北海道の住いは、100㎜厚程度の断熱では脆弱です。
断熱材を多層化して、壁部分では300㎜、床は土間床断熱とし、屋根又は天井断熱は500㎜を基準とする断熱厚さを推薦します。
高断熱は、省エネで快適な住空間を造ります。
『北欧の住いに負けない住いを北海道に』この実現には、断熱材の量と確実な施工が不可欠です。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2007年02月14日|ページの 先頭へ|