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自邸の移り変わりを見て思う事。

自身が設計した建物が設計通りの性能か使い勝手か、設計者がそれを確認する機会は、なかなか有りません。
その建物で、四六時中、体感も体験も出来ません。
しかし、自邸ならばそれが可能です。

設計者の自邸を見る事は、ある意味、その技術レベルの気極めになるでしょう。

住宅には何が求められるでしょか。
私は、普遍的なデザインと強固な構造、住宅として必要な性能を有する事だと考えます。
長い間にはデザインや好みは変わるし、流行はもっと早く変化します。

アメリカでは、有名建築家が設計した住宅は、人気が無いと聞きました。
住み替えの時、そのような物件は売りづらく、また高く売れないそうです。
デザインの好みが違えば、それは何の値も無いと言う表れなのでしょう。


1.自邸とハウスメーカーの住いを比べて


私が、自邸を設計したのは1983年で、設計コンセプトは『寒冷地で快適に住める家』でした。
どの程度、断熱を行えば寒冷地において、快適に住む事が出来るのか。
寒冷地住宅の進むべき方向は、断熱に有ると考えていたためです。
当時、総合建設会社に勤めていた私は、施工する立場で自邸を寒地住宅の見本に見立て、その試みを実施しました。

その時期の、主流断熱材は繊維系で、密度が16kg/m3、厚さ100㎜(壁部分)でした。
しかし、自邸設計では 壁断熱は密度24㎏/m3を200mm、床断熱は密度24㎏/m3を200mm、天井断熱は300㎜としました。
周りの関係者からは、『そんなに入れたら、体が納豆になるよ』と冷やかされたものです。

気密工事は、当時正しい施工方法も解らず、使用した材料も貧弱で現在の気密レベルまでには達していませんが、断熱厚さだけは確保していたので、室内の材料の劣化や住環境のレベルは、同時期の住宅に大きく差を付けている様です。

2005年、自邸建設と同時期に造られたハウスメーカーの住宅を中古購入した方から、内外部の調査依頼を受け、そのお宅を拝見する機会が有りました。
それは、一部上場のハウスメーカー住宅で、自邸と同じ車庫がビルトインタイプの、45坪位の建物でした。
今は亡き、建築家のSK氏が設計参画した建物で、当時は雑誌に載り一斉を風靡した建物です。(私も自邸設計時、そのデザインに憧れました。)

現地調査は、屋根裏点検口から壁、天井の断熱状態を見る事から始めました。
現状は、壁断熱材を内壁側からシッカリ押えて有る施工で、大きな問題は無い様に見えました。
断熱材も、壁部分で密度24㎏/m3を100mmと、当時では上級クラスの断熱でした。
しかし、車庫上の部屋では、押入れ部分の壁面入り隅に結露カビが発生し、相談者はその点が大事に至らないかと心配での相談でした。

車庫上部屋の、壁入り隅部のカビ
P7190001.jpg

車庫上の部屋は、断熱施工を確りしないと問題が起こりますし、とにかく寒い部屋に成りがちです。
防寒上不利なスペースですので、当時の施工能力では仕方が無いと思いますが、余りにもカビ臭い部屋だった事が気になりました。
しばらく、空き家だった事が原因かと思ったのですが。


2.問題はその他にも


でも、それだけが原因では有りませんでした。
車庫(外部と殆んど変わらない気候)から、室内に入る設計でしたが、その出入り口ドアは木製のベニヤ貼りで、断熱材が入っていないドアでした。
これでは、車庫からの冷気が、各部屋に行き渡ってしまいます。
つまり、内部と外部の断熱材区分が曖昧で、暖房エリアを明確にしていない住いだったのです。

床下点検口もベニヤ張りで、断熱材による区分がなされておらず、寒冷地住宅では致命的欠点と言える状況でした。(床下からの冷気が自由に室内に入ってくる。床下の防腐処理土台から、科学物が流れ込んでくる。床下の土壌菌であるカビ菌が室内に入ってくる。)
この床下点検口の処理は、現在建てられている家々でも、よく目にする問題施工です。
(現状でも、断熱区分が出来ていない、曖昧な空間を持つ家が多いのです。)

お住まいを、一通り拝見して気が付いた事は、

① 暖房は、セントラルヒーティングの温風式(ファンコンベクター式)で、建物面積の割合からは暖房機器の数が少ない事が解りました。
現状では、各室に温度差が出来て、低い室温により部屋の壁表面や壁内などで、結露を起す事に成ります。
本来、熱損失の大きい窓面を暖房で補強する配置に成るべきで、それ無しには室内温度の安定は有り得ません。

②車庫から、室内に出入りするドアが木製のベニヤ貼りドアで、断熱気密性が劣り熱損失をまねいていました。(車庫からは冷気が入り込み、車庫と隣合わせの部屋は、室温の低下を招いていました。)

③床下点検口も、申し訳程度の断熱材を敷き、アルミ製と木製による点検口での処理です。
床下から、冷気が自由に出入りし、熱損失を招いていました。

④玄関ドアは、アルミ製でガラスはシングルです。
こちらも大きな熱損失部分と成っていました。

⑤2階ホールには、大きな窓が付いていました。
当時の、ペアガラスの性能では、これも大きな熱損失部位です。
窓下には暖房機(ダウンドラフトを防止する処置)が、付いていませんでした。

総合すると、燃費が掛り、しかも冬は室内が寒く、夏は暑い住宅と判断できました。

このお宅の施工販売は、有名ハウスメーカーです。
この住いは、20数年前の作品ですから、有名ハウスメーカーでも、それらの問題への取り組みや、改善が行われていると思います。(確認は取れませんが)
しかし、このお宅は、これから何十年も使用されます。
快適な住まいには、程遠い状態で気の毒に思いました。


3. 自邸と比較する


その建物と同時期に建てた、自邸を比較してみます。

自邸の状況は、
①セントラルヒーティング暖房は、温水パネルヒーター方式で各室の窓下に配置されている。(暖房エリアの明確化)
②車庫から、室内に入るドアは設けなかった。(断熱区分の明確化)
③床下点検口は、車庫から入る様にして室内に設けなかった。
 床下収納庫は、断熱材で仕切ったスペースに入れる形をとり、熱が逃げないようにした。(断熱区分の明確化)
④玄関ドアはスウェーデン製の木製断熱ドアとしている。
ドア厚70㎜の断熱ドアで、ガラスはトリプルガラス仕様です。(断熱区分の明確化)
⑤各窓には、内側に断熱戸を設け、窓の断熱化をはかっている。(断熱区分の明確化)

この結果、述べ床面積52.0坪(171.6㎡)で年間暖房灯油諸費量は1200㍑です。
(灯油消費は生活パターンや非暖房室を設けるなどで数値が大きく変わります。全室快適な温度での消費量で対比して下さい。)


4. 急所は何か


ご相談者の建物を考えると、当時の性能としては上位クラスでも、時代は変わると状況も変わります。
性能を1ランクか2ランク上げておくと、経年変化や耐用年数、そして毎日味わう室内気候が大きく違います。

現在の、北海道の住宅での断熱厚さでは不充分です。
更に、広い北海道の内陸部の地域ほど、断熱厚さを増す必要が有ります。
今現在、普及している住宅の断熱厚さより、更に厚い断熱を施した自邸での体感を通して言える事です。

寒い朝の屋根からの熱損失
トタン屋根面で、室内からの洩れた熱が原因で霜の解け方が違う現象が起きている様子。
KIF_2117.jpg KIF_2125.jpg

もっと、断熱厚さを増した住宅にしましょう。
それで、住環境は大きく変わり、ご近所より快適で優雅な生活が生まれます。
現状のままの断熱厚さでは、燃費などのランニングコストは、こらから幾ら上昇するのか分かりません。
それよりも、化石燃料は枯渇に向かう事を、再度認識して望まなければなりません。
これは、近い将来の現実です。

仮に代替エネルギーが出てきても、断熱性能を有した住宅は弊害になるわけではなく、長
く快適に暮らせて、耐用年数が延びる住宅になります。
予算の配分では、デザインやささいな拘りも、セーブする必要があるかも知れません。
でも、それは住宅本来の目的である、外部の過酷な気候から、住人を守る事と考えれば、お解かり頂けると思います。
家は、長い間使用する物ですから、ランニングコストを考えたエネルギー対策がキーポイントです。

私の物造りは、昔から性能の追及が原点にありました。
これだけやればどうなるのか?
そんな感じで、自邸を設計し維持管理をしました。
それが、良い結果に出たと思います。


5. その違いは何故起こる


先日、ある知り合いの方が、自宅を解体し別の土地に新築することを聞きました。
その方の自宅は築25年だそうです。
築25年で廃棄される建築物とはあまりにも短命すぎます。
ほぼ同時期に建築された建物が、一つは廃棄され一つは更なる延命を持って現役を続ける違いは何処に有るのでしょうか。

スウェーデン在住の友子・ハンソンさんのお宅です。
1930年代に建てられたこの建物は、ご覧の通り現役です。
70歳代の建物です。
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この違いは何処からくるのでしょうか。
気候風土の違いだけで、かたずけられる問題では無いと思います。
明らかに、違いがなければこの様な耐用年数の差は有りえません。

それは、形を造るだけではなく、命を与える造り方の違いだと思います。
命を与える造りとは、建物が生きていける性能を与える事で、それによりその建物は、初めて本来の機能を有するのではないでしょうか。
建物は、長期に渡り内外に致命傷を負わない造り方が必要です。


6. 長期的視野と短期的視野


先日、北海道の建築関係のお役人さんが講演会で、『北海道の住まいは、50年は充分持つように成った。それは、セントラルヒーティングが普及し、それに対応した断熱が出来る様に成ったからだ。』と話していました。
これでは、今の造り方で十分だ。と言っているのと同じです。
更に言葉続き、『次世代省エネ基準は、世界的に見ても充分に誇れる基準だ、』とも言っていました。
立場ある人の発言は、その言葉自体が生きます。
傍聴者は、その言葉を信じて、ハウスメーカーや工務店の言い成りに、断熱厚さは廻りの建物と同等基準にするでしょう。
それは、大きな間違いで嘘とも知らずに。

次の写真は、ある改修工事現場のものです。
実態はこの様な現状なのです。
現在建てられている住宅が、この様な状態で無いと言い切れるのでしょうか。

1997年施工のハウスメーカーの建物(パンフレットには、オール電化住宅と書かれています。)
2005年改修工事の解体時の状況。
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100㎜しかない断熱材と土台間が10㎜位空いています。
この間は、無断熱状態です。
付近には同規格の建売住宅が沢山建っています。
付近の住宅は、同じ状態なのでしょうか。

同じくコーナー部分の断熱状況です。
こちらは、筋交いがありその裏は断熱無しでした。
右の写真は大きく写したもので、壁内の金物まで見えます。
金属の補強金物も、断熱無しでは熱橋に成り、補強ではなく弊害にしか成りません。
P9240007.jpg P9230008.jpg

この様な仕事は、長期的視野に立ったモノでは無い事は明白です。
写真は、北海道の大手ハウスメーカーの建売住宅での写真です。
1997年頃に建てられたこの住宅の断熱状況がこの状態です。
オール電化住宅のネーミングが泣きます。
これが、現在の寒冷地住宅の実態です。
この様な施工をしている、大手ハウスメーカーが大半なのでしょうか。
また、僅か100㎜しかない、壁断熱の施工が写真の様では、50年の寿命も得られず、ランニングコストもどれ程掛るか分かりません。
写真が、特別なモノでは無い事を知って下さい。
この様なヤリ逃げ的工事では、スウェーデンの住宅の様に、70年も現役を続ける事は出来ません。


7.将来に向けて


今後、石油価格の高騰が毎年起こってきます。
現状の断熱程度では、セントラルヒーティング暖房は燃費過多に成り、消費者は使用を続けていけないと思います。
石油価格の高騰が続けば、消費者は局所暖房(又は、寒くても間欠暖房へ)に切り替えます。
その為、結露現象やカビの発生が頻発し、建物の寿命は益々短く成っていきます。
しかも、現状の住まい造りは、50年持つ家では有りません。
断熱が貧弱過ぎ、気密もいい加減です。
熱がどんどん逃げていく様な、現状レベルの住まいでは、省エネどころで有りません。

世界は、石油で動いている事を、再度認識する必要があります。
(無暖房住宅の設計者ハンス・エーク日本講演の言葉より)

その石油を100%輸入しているのが、我が国日本である事を思い出してほしいのです。
この時期、建築行政のお役人が『セントラルヒーティングの普及だけで、住まいが長持ちするように成った』では、将来に向けた言葉では無いと思うのです。

このお役人さんの言葉は、『全室暖房に成ったので非暖房室が無くなり、壁内結露などが起きづらくなった。それが結果的に家の寿命を延ばす事に成った。断熱気密性能は、セントラルヒーティングに適応出来る程度を目安にしただけで、それ以上の省エネ性や低エネルギー性までは、視野には入っていない。』
そう言っている様にも聞こえます。

もう1つ知っておく事は、断熱の厚さだけで家の性能が出るのであれば良いのですが、施工性よりそれは大きく変わる事も知っておく必要が有ります。
断熱材の入れ方で、最大50%も性能低下を招きます。
造る人が、その性能を100%引き出す造りをしなければ成りません。

断熱材の施工精度による性能低下率(北海道建築講座資料より)
断熱精度.jpg

将来に向けて、断熱強化や窓・ドアの性能向上を計るべきだと考えますが、現在建ち続ける家々は、その様な観点で建てられてないのです。
省エネには、程遠い断熱や窓・ドアなのです。
今、建てられている家々は、お役人さんが言うところ50年住むわけですから、50年経っても充分その時代に対応出来る様な、住まいであるべきと思うのですがそうではないのです。

これから近い、5年、10年後の石油価格はどの位に成るか想像できますか?
この近年の石油価格は、上昇しか有りません。
石油枯渇は、アジア諸国の近代化や工業化で加速していきます。
南米やアフリカ諸国も続くでしょう。
代替エネルギーは何時出来ますか?
明快な答えは、どの国からも出ていません。
ですからスウェーデンなどでは、脱石油燃料を早くから模索し、現在はその転換期に入っています。
然るに、日本の現状は先に述べた様に、時代錯誤も甚だしい状況なのです。
1つの事柄で、人により受け止め方や、考え方はいろいろ有ると思いますが、事、断熱材については日本の考えかは間違っていると私は思っています。

『環境共生』『地球温暖化』『化石燃料の枯渇』『京都議定書の発効と批准』など、世界は変わっていかねばならぬ時期にきています。
そんな中、自邸の更なる数十年後と、周りの家々を見比べて行きたいと思います。


8.写真による自邸の移り変わり


自邸の移り変わりを写真で追います。

白亜の豪邸と言われた時期(勿論、冗談にですが)1983年新築時。
しかし、外装材が凍害に弱く、次の写真の増築時期に張替えました。
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増築を機に、外装材を変えました。1991年当時。
でも、バブルの時期で外装もバブルでした。(値段が高く、材質が弱かった)
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今回は、外装改修だけで済ませました。
断熱材は、新築時に付近の家々の2倍入っています。
2006年4月外装と内部の一部部屋の改修工事を行う。23年経過の自邸。
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無暖房住宅では有りませんが、結構省エネ住宅です。
断熱・気密工事、窓、ドアの性能アップは、新築時に完全にしておく事が一番経済的です。


【自邸の移り変わりを見て思うこと】終り

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2007年02月09日|ページの 先頭へ|