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パッシブハウス(その2)

5.支援の違い


スウェーデン、ドイツでは、省エネ住宅には税制面や融資面での国家的支援があります。
その例として、スウェーデンのヨーテボリ市の新聞記事に以下の記事が載りました。

『スウェーデン国会は、2005年12月16日、再生可能なエネルギーに切り替える住宅の持ち主には、特別助成金を支給することを承認した。
2006年1月1日から2010年12月31日までに、石油ボイラーや電気による直接暖房などから、再生可能なエネルギーに変更する住居の持ち主に、いわゆるコンバーテーリング支援が与えられる。
支援を受けられるエネルギー源は、地域暖房または、バイオ燃料、地熱や太陽熱による個別の暖房です。
普通の個人住宅への支援以外にも、集合住宅や住宅に接続している場所などにも支給されます。
支援は、税金の払い戻しという形式が取られる予定ですが、切り替えにかかった経費にはある一定の最高金額があり、経費の最高30%までと定められています。』
(EIニュース・スウェーデンかの報告、友子・ハンソンさんより)

また、ドイツでは、建物を改善する助成プログラムガ整備されました。
連邦政府、州政府、地方自治体が助成に基準を設け国民に呼びかけたのです。
助成プログラムの例では、太陽光発電の場合1/KWh当り、40.60¢~51.80¢/KWh(20年間)の買取り価格とか、太陽光集熱の場合は、パネル設置1㎡当り、135ユーロ補助金がでます。

ドイツの助成プログラム例(2006年日独シンポジューム資料より)
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ソーラー発電の電力買い上げは、日本でも行われていますが、ドイツの買取りは、買い上げ単価が普通電力より高く、優遇されている点が大きく違う点です。
ドイツの成果を見ると、助成制度方式にすると効果が大きく、あめ玉の方式が消費者には良い結果が出ている様です。

政治で断熱基準を設けても、業界や民生は動かずの状態が日本の現状です。
ドイツ、スウェーデンを見ると、一般的住宅が省エネ住宅、低エネルギー住宅、そして0エネルギー住宅に向かう支援や助成の違いが分かります。


6.パッシブハウスはエコハウス


パッシブハウスに付いて述べてきましたが、最近はエコハウスの言葉も聞かれます。
エコハウスとは、どんな住宅でしょうか。
エコハウスとは、「環境と共生した住宅」のことで、「環境への負荷を少なくし、健康で自然と共存する」という、理念で造られている住宅です。
「自然素材を出来るだけ使う」「有害物質を使わない」「リサイクル出来る素材で造り廃棄物を減らす」「断熱性を高め、エネルギー消費を減らす」「自然エネルギーを使う」などです。

このエコハウスで言う、「断熱性を高めエネルギー消費を減らす」「自然エネルギーを使う」は、パッシブハウスの基本です。

そして、エネルギーの面から考えると、住宅のライフサイクルコスト(LLC)で、一番エネルギーを使っているのは、実際に住宅に住み使用している時期なのです。
住宅の原材料などから出るCO2は全体の約20%、住宅生産時のCO2排出は5%、これに対して居住時が、大部分を占めて75%なのです。
住いを利用する長い期間に、暖冷房や給湯、照明、調理など、いろいろとエネルギーを使うからです。
つまり、人間の営みは、環境への負荷は避けられないとも言えるのです。

地球の負荷を、出来るだけ軽くする住いが、『エコハウス』であり、それは『パッシブハウス』に繋がる事にもなります。


7.真のパッシブハウスが、手の届くところに


パッシブハウスは、一般的な住宅技術で造られるまでに成ってきました。
スウェーデンでは、無暖房住宅は実用化され市場に出ています。
それには、大掛かりな装置も、特別な技術も要りません。
現在の建築技術で、十分施工が可能な範囲なのです。
それを、実証したスウェーデン、ドイツは、すごい国だと思います。
何故、気候条件が有利な(北海道を除いて)日本で、無暖房住宅の発想が生まれないでしょう。

原因の一つは、建築を造る上で重要な、建築物理学の学問が日本には無く、断熱厚さの有効性、窓、ドアの性能を上げること、性能の確かな熱交換換気装置を付けるなどのハード面と、高温多湿の気候に対する相関関係が解析出来ないソフト面の、両方が大きく影響していると思います。

スウェーデン・ルンド大学にある建築物理学部の校舎
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ドイツ・フランフォーファー建築物理研究所
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もう一つは、社会問題への取組む姿勢の違いだと思います。
その理由は、1972年(昭和47年)頃の第一次オイルショック時に、スウェーデン、ドイツは省エネ政策に向かい、日本は備蓄政策などエネルギー確保の方向にシフトした事です。

その典型が、スウェーデン、ドイツは、鉄筋コンクリート造の建物を外断熱化し、日本は内断熱にしたことに表れます。
つまり、理論と実践を重視し長期的視野に起ったスウェーデン、ドイツに対し、目先の小手先手法を採用したのが日本です。

外断熱の概念図(スウェーデン・ルンド大学のレクチュアより)
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鉄筋コンクリート造の建物を、外断熱化出来ない理由を、『高温多湿地域だからだ』と言う、言い訳をよく耳にします。
スウェーデン、ドイツの技術や理論を、そのまま日本で実践すべきとは言いませんが、日本の国力や技術力を持って、何故その地域的問題の解決が出来ないのかも不思議に思います。

建築業界関係者は、本当に知らないのでしょうか?
RC造に措ける外断熱の効果と有利性、木造に措ける高断熱の必要性、現状の窓、ドアの低性能、熱交換換気装置の本物と偽物が市場に混在する事実を。

本当に確信しいるのでしょうか?
現状の木造住宅が、今後、寿命50年の領域まで来ていると、言い切るお役人の自信は。
次世代省エネ基準は十分に、世界に通用すると言い切るお役人の自信は。
RC造は、内断熱でも外断熱でも良いとする、自信は。

現状の建物に於ける苦情のNO1は、結露関連の問題である事を、どの様に捉えているのでしょうか。
分譲、賃貸マンションでも、住人は燃費節約を考え個別暖房を選択し、さらに間欠暖房を繰り返し、結果結露を誘発させ、カビの出る住環境で生活している実態を、どう見ているのでしょうか。

住宅の壁隅に出ているカビ(熱橋による表面結露)
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賃貸マンションの壁のカビ例(内断熱と熱容量不足)
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日本の住宅改善を、スローダウンさせているのは、彼らお役人ではないのでしょうか。
省エネを遅らせているのは、彼らではないのでしょうか。
住人の健康を縮めさせ、財産の無駄使いをさせているのは、彼らではないのでしょうか。

第一次オイルショックの1972年から、多くのお役人や学会の先生達が、挙ってスウェーデンや北欧地域、ドイツ等の視察を行っています。
しかし、業界情報ではその内容は一部の人達にしか知らされず、我々第一線の技術者にはその情報は伝えられず、現在もその情報は生かされていません。
それは、現状の北海道の住宅が、それらの国々から大きく遅れを取っているのが何よりの証拠です。


8.北海道に必要な物


何故、私が個人レベルで外断熱工法やパッシブハウス(無暖房住宅、自己暖房住宅)を述べるのでしょうか。
何故、私が高断熱化や高性能な窓、ドア、熱交換換気装置の必要性を述べるのでしょうか。

それは、気象条件も経済状況も厳しい、北海道の現状があるかです。
高性能で、耐久性のある住いを必要としている、北海道の現状があるかです。
無駄な失敗や、後悔する様な住い造りをさせたくないからです。

それには、知りえた情報を発信して、それに基づき消費者の皆さんが、住宅先進国との住いのレベル差を感じて頂き、そして正しい判断をして頂きたいからです。

北海道の消費者の皆さんが、それらを望まなければ、建築業界は決して変わりません。
何故ならば次の事柄を考えて見て下さい。

北海道の人口は、約560万人です。
日本の総人口の5%弱です。
その様な地域に対し、その地域が必要とする様な商品(高性能な家、北海道に必要な性能を持つ家、そして窓・ドア・換気装置など)を、大手の企業が提供するでしょうか。

無暖房住宅の窓(この窓は、北海道の住宅で
使用されている窓の2.7倍の性能値です。)
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北海道に必要な、限定的商品を大手企業が作るでしょうか。
その為の、研究開発予算を企業が捻出するでしょうか。
どれだけ売れて、どれだけの利益が出るか、それしか考えない企業がそこまでやるでしょうか。
地場の建設会社や工務店も、大手企業の真似的営業戦略で、その方向性の差が有りません。
もし貴方が、業界企業の社長さんだったら、どうしますか?
真に北海道が必要とする物を、提供する方向に動きますか?

答えは、現状と同じだと思います。
そです、答えはNOだと思います。

基準に付いての1つの例として自動車の安全基準が有ります。
日本から海外に輸出される輸出向け自動車の安全基準が、日本の消費者に知れた事から、国内販売車との安全基準の差を無くす必要が出た為に、旧通産省(現国土交通省)や業界が改善に動いた経緯が有ります。
この例は、その国の安全指針ですら、業界は『積極的に先回りはしない』事を見せ付けています。

ですから、住いも現在示されている基準程度ではなく、住い手の要求と地域に見合った基準を求める事から、その性能や造り方が動きだすと考えます。
現状は情報が少なく、消費者が知らずに低い基準の住いを、購入しているのです。

もう一つ車の例で、スウェーデン製の車で有名な、ボルボ社が有ります。
ボルボ社の車は、丈夫で安全と評判です。
しかし、スウェーデンに行くと、トヨタ車の評判の方が良いのです。
性能、燃費に高い評価が出ています。

また、スウェーデン、ヨーテボリ市にあるエコセンターには、環境に良い製品の展示があり、輸送部門の展示エリアには、トヨタのプリウス車が大きく看板で展示されています。

スウェーデン、ヨーテボリ市にあるエコセンター
この建物も、古い病院を改修して省エネルギーな施設にコンバージョンさせている。
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スウェーデン・ヨーテボリ市にあるエコセンターのトヨタ・プリウス車の展示
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トヨタのプリウス車が、環境に良い車とされ、ボルボ車よりも高い評価で、一番大きく展示されています。
エコに関する公平な評価と厳しい監視の目、そして高い視野を感じました。
ここでの展示は、トヨタ車が安全を満たし更に性能、燃費、環境に高い評価を受け、世界一の称号をもらっていると言えます。
性能、燃費、環境、安全のどれかが劣ると、自国の車も評価が下る、この当たり前が、公正に行われている事が、いまのスウェーデンを支え、繁栄させていると思うのです。
これらの事柄は、スウェーデンに措いて人間の営みに係る、全てに付いて公正に行われている事なのです。

住いは、人間の営みに欠く事の出来ない物です。
世界一を沢山生み出す国日本で、住いだけが取り残されている状況を、スウェーデンの無暖房住宅設計者、ハンス・エーク氏は、日本講演で各地を廻り実感していました。
講演の合間に日本の住いに付いて質問すると、
『何故こんなに繁栄している日本で、貧弱な住いなのか、ビルは省エネを無視したガラスと非断熱、内断熱なのか』と、逆に質問されます。
優秀な製品を世界に出す日本で、乱立する建物は結露やカビが普通の事と考え、省エネには程遠く、劣悪、短命な建物造りをする事が、奇異に映るのです。

六本木ヒルズからの東京(結露とカビが無く、世界に誇れる省エネビルは有るのか。)
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先日も仕事で、東京に出向いた際、宿泊したホテルは、東京タワーに近い一等地に建つホテルでした。
(受験シーズンで、漸く取れたホテルでした。)
そのシングルルームの外壁側の壁を見ると、壁と天井の境目に薄黒いシミが幾つか見えました。
よく見るとそれは、カビによる変色でした。

東京のホテル内のカビ(天井と壁の境目)
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壁を叩くと、コンクリート音です。
コンクリートにモルタルか同類の下地を施し、クロスを貼った仕上げです。
この様な状態が、都内に建つ他の建物にもある事は、充分予測出来る事です。
華やかな東京の建物が、無断熱、内断熱の状況では、当然の結果です。

北海道に話を戻すと、独自の発想と研究、情報の活用が必要です。
真の北海道の住いが必要です。
少しでも、パッシブハウスに近い、住い造りが必要です。
この厳しい気象条件を克服し、快適で省エネルギーな住いが必要なのです。
正しい住い造りの情報が、今、廻りには有りません。
その正しい住い造りの情報発信が、私の一つ仕事だと思っています。


パッシブハウス 終り。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2007年02月13日|ページの 先頭へ|