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パッシブハウス(その1)

1.パッシブハウス

パッシブハウス(受身、受動的な家)とは、どんな家でしょう。
自然エネルギーを住居内に取り込み、それを熱源とする住宅。
室内で発生するエネルギーの利用、つまり人体から発生するエネルギー、家電品から発生するエネルギー、窓から入る太陽エネルギーなどを有効利用する住宅。
積極的な人工的エネルギー無しで、室内が20℃以上に保たれる、そんな住宅がパッシブハウスです。

この様な住宅が、現在スウェーデン、ドイツで実用化され、一般消費者が居住する段階に成っています。
この分野では、ヨーロッパ各国が研究、開発で先端を行き、第一次、第二次オイルショックを踏まえ、省エネルギー、低エネルギー、0エネルギーそして、プラスエネルギー住宅が段階的に実用化しています。

ドイツのプラスエネルギー住宅(在日ドイツ商工会議所資料より)
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日本現状では、実用化の動きがあまり有りません。
僅かですが、民間レベルでの動きが、漸く出てきています。

2.スウェーデンのパッシブハウス

2003年に視察した、スウェーデンの無暖房住宅は、理論を実践化した素晴らしい住宅でした。
暖房設備が全く無い、無暖房住宅が究極のパッシブハウスです。
2001年からそれは実用化され、究極のパッシブハウス=無暖房住宅で、スウェーデンの一般市民が生活していました。

スウェーデンでは、2001年から無暖房住宅が実用化されている。
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この無暖房住宅は、どの様な造りに成っているかと言うと、外郭は断熱材強化が基本です。
床はコンクリートの土間床で、土間下に断熱材が250㎜、基礎側面に120㎜。
壁面 :435㎜壁断熱。
天井 :500㎜天井断熱。
の断熱材で建物が囲われています。

無暖房住宅の断熱図
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断熱材を、100㎜~150㎜位の厚さごとに重ねることで、熱橋(ヒートブリッジ)を小さくしていくのです。
特に、スウェーデンでは一般的な工法に成っている、1階床コンクリートが土間床である事が、熱損失を小さくしている要因です。

外郭断熱部以外の、窓・ドアに付いても、高断熱・高気密で高性能な、外建具が付けられています。
特に、窓はクリプトンガスが入ったガラスが使われています。
この窓は、現在北海道で一般的に使用されている窓性能の、約3倍の性能値です。
ドアも、風除室を設け高性能なドアを、2重にして室内に入る仕組みです。
屋根には、ソーラー給湯パネルがあり、このソーラー給湯パネルで、年間必要給湯分の50%を賄えるそうです。

無暖房住宅の屋根にあるソーラー給湯パネル。
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熱損失で大きな問題である換気は、高性能な熱交換換気装置で対応しています。
熱交換率は、85%と言われています。

無暖房住宅の熱交換換気扇。
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熱交換率は、換気メーカー各社の発表であり、自社製品比率との比較が多く、測定や判定も、製造会社や開発会社によるもので、明確の基準はありません。
しかし、無暖房住宅の熱交換換気装置は、熱交換部分が他社製品と比べ大変大きく、その熱交換部分を見る限り、85%の熱交換は充分期待できそうです。
また、メンテナンス、保守点検なども、充分考えぬかれた製品です。

この様な熱交換換気装置は、私の知る限り日本国内には有りません。
輸入されている、ドイツのS社製品も、熱交換率を90%と謳っていますが、熱交換する部分が小さく、その回収率は疑わしく見えます。
また、フィルターの性能や強度にも差を感じます。

パッシブハウスは、小さなエネルギーで十分と言える住宅性能がなければ成りません。
その性能を出す為に、難しい仕組みや工法が必要なのでは普及しません。
誰でも、何処でも、出来る工法で無くては成りません。
スウェーデンの無暖房住宅は、現状の工法で誰にでも造る事が出来るのが高評価の原因です。
少しのノウハウと、太陽光が差し込むだけの敷地が有れば、究極のパッシブハウスが出来る段階まで来ています。

3.成功は連鎖を呼んで

2003年に視察した、ヨーテボリ市リンドース団地の無暖房住宅から、3年経過した2006年3月スウェーデンを再度訪問して驚いた事は、パッシブハウスがスウェーデン国内の各地で建設されている事です。
ヘルシンボリ市、バルナモ市では、別な設計者により、無暖房住宅、自己暖房住宅など、高性能なパッシブハウスがどんどん建てられていました。

スウェーデン・ヘルシンボリ市の自己暖房住宅(この建物は市営住宅です。)
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スウェーデン・バルナモ市の無暖房住宅(民間賃貸アパート)
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また、ヨーテボリ市の集合住宅設計が、途中から無暖房住宅に変更され、ヨーテボリ市が断熱厚さを増す事により発生した、外壁と敷地境界線の問題に緩和処置を取るなど、行政と民間が省エネを前提にした動きをしていました。

スウェーデン・ヨーテボリ市の無暖房住宅マンション計画模型2006年完成予定
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スウェーデンでは、リンドース団地無暖房住宅の成功が、スウェーデン全土に無暖房住宅を造る連鎖を呼んでいました。

4.住いの違い

住いのパッシブ化を進める前に、重要な点はスウェーデン、ドイツの一般的な住まいの性能が、現在の日本の住いとは比較にならない位、高い性能の住まいである事を見過ごす訳にはいきません。
スウェーデン、ドイツの住まいに措ける、断熱、気密、窓、ドア、換気が、日本の住いのレベルでは遠く及ばず、日本の住いからパッシブハウスを目指すステップが高いと言えます。

日本では、パッシブハウスの言葉だけが先行し、どこまでの事をすればパッシブハウスと言えるのかが曖昧で、その性能も低いため現実化しても効果が余り見えない状態です。
また、消費者の住いに対する要求が性能ではなく、最終的には目先のデザイン性や奇抜さ、色や装飾に向き、隣近所との差別化がステータスと言う考え方の為、造る側もそのニーズに答え、性能よりも色、形に重点を置く様に成っています。

これはある意味、業界の偏った情報発信の影響とも言える事で、日本に措ける住いの性能アップには、消費者の方々もそれに注目してもらわなければ、解決出来ない状況に成っています。
技術的には、無暖房住宅が日本国内に沢山出来ても、不思議ではないと思います。
パッシブハウス、無暖房住宅に目が向いていないだけです。

パッシブハウス(その2)に続く。

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2007年02月12日|ページの 先頭へ|