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これからの換気扇について

1. 熱交換換気扇を基準としたい

現在の住宅には、シックハウス対策として、機械換気装置の設置が義務付けられています。
機械により、室内空気の入れ替えを行う仕組みです。
その量は、建て物内の体積を、1時に約1/2分入れ替える量です。
現在、使われる機械換気装置の主流は、自然吸気 ⇒ 機械排気(第三種方式)です。
つまり、排気を機械で行い、排気(汚染空気)された室内空気の不足分を、吸気口より自然に取り入れる方式です。

しかし、自然吸気 ⇒ 機械排気(第三種方式)には、問題が幾つか有ります。

外部の風が強い日は、自然吸気口からは、必要以上の空気が室内に流入します。(室内で空気の流れを感じる。寒い。)
また室内で、快適な温度にした空気(コストを掛けた空気)が、冬は外の冷たい空気と、夏は湿度の多い暑い、外の空気と入れ替わってしまいます。
その量は、建物体積の約1/2です。

つまり、室内を出入りする空気のエネルギー交換が行われず、新鮮な空気の変わりに、冬は室温を下げ夏は室温を上げてしまう事に成ります。(どちらもエネルギーを捨てる事)

その様な、問題を解決する方策に、機械吸気 ⇒ 機械排気(第一種方式)が有ります。
しかも排気と吸気の際に、熱交換を行う方式です。
この換気装置を、熱交換換気扇(装置)と呼びます。

熱交換換気扇は、入排気を機械で行い、その本体部分に有る熱交換エリアで、入排空気をクロスさせ、熱を温度の低い入気側に移動させ熱交換します。
入排空気をクロスさせる部分(熱交換器部分)は、入気部と排気部が薄いアルミ板で仕切られ、新鮮空気が汚れた空気と混ざりあう事はありません。

この熱交換換気扇について、国内の換気メーカーでは異論もあります。
寒冷地では、湿度のある排気が熱交換するアルミ部分で、外気導入により温度を下げアルミ部分で結露を起し、更にそれが結氷したりする事があり、その対策が必要と成ります。
そのため、結氷対策用にヒーターを内蔵したりする為、技術的な問題やコストアップが起こります。
販売を考えると、形式が簡単な第三種方式の換気扇が、コストを低く押える事が出来て販売しやすく、コスト高の熱交換換気扇(第一種方式)に対して、国内メーカーは本腰を入れていないようです。

そうした日本の現状の中、住宅先進国のスウェーデンでは、熱交換率85%以上を誇る熱交換換気扇が、市場に出ています。

無暖房住宅の熱交換換気扇。熱回収率は85%以上。
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これから、省エネルギー、低エネルギー、そして究極の無暖房住宅に移行していくであろうエネルギー状況の中、この様な高性能な熱交換換気扇無しにはそれは出来ません。
無暖房住宅で、使用されている熱交換換気扇は、熱交換器部分が大変大きいのが特徴です。
熱交換する部分は、アルミ製で横幅の有る、狭い仕切りが沢山ある構造です。

アルミで出来た熱交換部分。他社製品に比べ、熱交換部が大変大きい。
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熱交換換気扇の、上部にある4つの出入り口の1つに、室内から排気ダクトを通って戻ってくる汚れた暖かい空気が、もう1つの入り口からは、屋外から冷たい新鮮空気が入り、アルミで出来た熱交換部分の仕切りを隔て、それらがクロスした際熱交換が行われ、汚れた空気は熱を奪われ屋外に排出され、外からの冷たい空気は、熱をもらい温度を上げた状態で、各居室の噴出し口へ流れれていきます。

熱交換換気扇の熱交換概念図
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本体のサイズは、H1900×W430×D620で、重量は100㎏です。
先程のアルミ部分をみてお分かりの様に、熱交換部分が大きいので、全体サイズも大きく、重さも重く成っています。
置く場所は、台所やユーティリティーで、その為にホワイト家電と同色にしています。
熱交換部分が大きい事で、当然、熱交換率が高まります。
スウェーデンの、3ヶ所の無暖房住宅で、この機械がすべて採用されおり性能は実証済みです。

スウェーデンでは、他の熱交換換気扇も有ります。
建材展示場に有った、この熱交換換気扇は、横型でL1050×H480×D520サイズです。
重量は、63㎏です。

ヨーテボリ市建材展示場に有った、熱交換換気扇とカタログの外観写真。
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もうひとサイズ大きい物が有る様ですが、熱交換部分は、無暖房住宅で採用されている物よりも小さく熱交換率は劣るように見えます。
スウェーデン国内では、熱交換換気扇の製品数は多いようですが、その性能にはバラつきが有る様です。
また、ノウルウェー製やフィンランド製の製品も、スウェーデン国内に出回っている様です。

3ヶ所の無暖房住宅の1つノルマン団地では、最初に採用した熱交換換気扇が、熱交換率が悪く65%の数値しか出来なかったそうです。
そこで、リンドースで採用した熱交換換気扇に全棟取り替え、その後は良い結果である事が、訪問時の説明で有りました。
熱交換率の良さが無ければ、無暖房住宅の様な微量な熱源で室温を安定させている住宅では、その保障は有りません。
そうした状況下で、良質な製品が出てくのでしょう。

最近、国内でも輸入された、熱交換換気扇が出てきました。
省エネの観点からも大変喜ばしい事ですが、よく見ると無暖房住宅で見てきた熱交換換気扇よりも、熱交換部分が大変小さいのが気に成ります。

この熱交換部の大きさで、熱交換率90%との事ですが?
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本体のサイズは、H662×W675×D420で、重量は31㎏です。
性能も、無暖房住宅で使用されていた物よりも、熱交換率が5%上の90%と書いていました。
しかし、この機種は熱交換部分の大きさも気に成りますが、熱交換する部分がX型なのが、更に気になります。
この熱交換部X型方式は、その隅部分で熱交換しずらい部分があり、スウェーデンでは熱交換が安定しないと聞きました。
この辺は、今後の動向を見てみたいと考えますが、熱交換率の基準設定など、業界としての体制も早急に整えてほしいものです。

2. メンテナンスは、複雑か単純か

どんな物にもメンテナンスは必要です。
特に、24時間可動している換気設備装置にとっては、メンテナンスは大変重要な要素です。

現在の国内製品や輸入製品の換気設備機器は、天井や壁付け設置タイプが多いのですが、メンテナンスに必要な点検口の大きさが確保しにくく、故障やリニューアルの際、機械や部品の取り替えがスムーズに出来ない現状です。
また、設置スペースや用途上目立たない様に扱われるモノだけに、コンパクトに設計される更に狭いスペースに追いやられる傾向に有ります。

機械がいずれ壊れる事は、皆さんお解かりの事ですね。
ですから、それを前提とした設置と機種選定が必要と私は考えるのですか。

無暖房住宅に、設置されていた熱交換換気扇は、床置きタイプで色はホワイト色です。
メーカーの説明は、ホワイト色にして冷蔵庫や冷凍庫と並べて置いてもらうためであり、水周り近くの設置は、メンテナンスのため水道口からホースで熱交換部分を洗浄する為との事でした。
勿論、水道水で洗浄された汚水を流す排水口が、熱交換換気扇の一番下に付いていました。

無暖房住宅の熱交換換気扇下部の排水部分
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換気製造会社での説明。換気本体の他、ダクトなども製造している。
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ユーザーの皆さんは、維持管理の点を考えて、設計者に質問や疑問を投げかけ、最良の製品を選ぶ事です。
もう一つ単純なメンテナンスの部品にフィルターが有ります。
新鮮な空気を室内に取り込む際、重要な役割を成すこのフィルターが、軽視されているのが現状です。
吸気部分からの、埃や花粉類の流入を防ぐフィルターも、国内で手に入る製品は劣化しやすい素材の物ばかりで、長く使える物がありません。
また、取替えを繰り返すうちに、メーカーは機種変更やモデルチェンジを行い、フィルターが手に無いらない結果が起こります。
これはフィルターだけではなく、モーターやその他の部品も同じです。
国内の機械類の部品ストック期間は、7~8年周期と聞いています。
外国と比べると、ストック期間は大変短いのです。

換気フィルターについても、無暖房住宅の熱交換換気扇は、大変良いフィルターが付いていました。
複層になった、ポリエステル製のウサギの耳状のフィルターでした。

無暖房住宅の熱交換換気扇と同型の内部。左側の2つの袋状の物が、フィルターです。
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取替えが簡単に行えて、維持管理が大変楽で、良く考えられた作りでした。
このフィルターや換気装置のモーターは、EUヨーロッパ基準なので、製造中止や販売中止にはなら無いと、メーカーから説明を受けました。

スウェーデンの換気メーカーは、ユーザーの立場になり、製品開発を行っている感じがしました。
すべての物を、長く使う事が要求される時代背景ですが、日本の製造や販売原理は、捨てる事とが前提になっている事を、認識して機種選択する必要があります。

3. 熱交換換気装置の必要な理由

熱交換換気装置による熱回収効果は、室温の安定など室内気候に大きな影響を与えます。
そして、省エネルギー住宅や、その上の低エネルギー住宅には不可欠です。
また、熱回収率と電力などの維持費の相殺についていろいろ言われていますが、現在の住居にはシックハウス対策として、何れかの換気装置が義務化されています。

熱交換換気扇でない、他の第三種換気装置でも、ファンは電気エネルギーで回っています。
いずれにしても、電気を使うモーターを動力とし、室内汚染された空気の入れ替えが必要なのですから、ただ捨てるだけではなく熱交換して熱を回収すべきだと考えます。

熱交換換気扇は熱交換する際、内外部の空気温度差と湿気のため熱交換部分で結露します。
外気が特に冷たい時期は、熱交換部分での結氷も考えられます。
そのために、霜取りや結氷防止のため電熱ヒーターが設けられています。
その結氷防止用電熱ヒーターには、サーモスタットが付いているため、必要なとき意外は電源が切れ無駄な電気を使いません。
またそのヒーターで、熱交換され入気する新鮮空気の、不足温度を補う役目もします。
ただ、大きなヒーターではないので、入気空気を暖める温度は2~3℃程度です。
何れにしても、熱交換率が高い機械でなければ、その省エネ性が発揮出来ません。

もう1つ重要な空気の鮮度が有ります。
この点も、無暖房住宅に付いていた熱交換換気扇は、機械の吸気口にフィルターが付いていて、外部からの埃や花粉をダクト内に入れません。
スウェーデンの、熱交換換気扇のフィルターの性能は、国産品の換気装置のフィルターと違い、何層にもなった性能の良い物です。
この他、内部にフィルターがもう一層有り、2重のフィルターを通り空気は室内に入っていきます。

熱交換換気装置内部。左側の2つの袋状の物が、フィルターです。
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第3種換気システムの様に、壁の開口部からの吸気ではなく、機械吸気はレベルの高い換気方式と言えます。

熱交換換気扇のダクト内の清掃問題を挙げ、熱交換換気扇を不衛生あつかいするホームページがあります。
何故、外国で実績のあるものを否定するのでしょうか。
もっと、外国の状況を見て国内でも性能の良い換気装置や、メンテナンスの楽な製品開発を目指してほしいものです。
ダクト清掃についても、換気メーカーが対象方法やメンテナンスを積極的に指導すべきです。

省エネや室内気候の安定、衛生面からも普及を諭すべきで、これからの時代背景から、第一種換気システム(熱交換タイプ)は不可欠です。
売りやすく、販売しやすい比較的価格の安い、第三種換気装置を美化するホームページには、不快感を覚えます。
換気業界は、普及促進を図る体制と換気設備の改善を進め、消費者に対し良い物を出してほしいものです。
スウェーデンでは、フィルターは1年毎に取替え、5年に一度の間隔で清掃業者がダクト内清掃を行うそうです。

第3種換気システムの、吸気は自然に任せる吸気です。
その簡単なフィルターを通す吸気は、埃や花粉を容易く室内に入れます。
第3種換気システムの、メンテナンスのし易さは、ディフェンス(防御)の甘い換気方式であると考えます。

【これからの換気扇について】終り

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パッシブハウス・無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2007年01月25日|ページの 先頭へ|