【日本の外断熱を見る】
興和地所さん訪問、外断熱MS現場見学、環境・省エネ外断熱工法推進議員連盟講演
2005年2月24日(木)
朝、ハンス・エーク氏と私が、宿泊している愛宕山東急インに、堀内事務局長が迎えにきた。
今日は、都内で外断熱マンションを積極的に建設販売している、興和地所さんを訪問する。
タクシーで都内を走り、訪問先の興和地所さんに着くと、社屋の入り口にはテレビの取材スタッフがきていた。
関西テレビが無暖房住宅の設計者と、日本の外断熱マンションをテーマに、関西地区で放映予定だと聞いた。
興和地所さんのプレゼンテーションルームで、取材は始まりました。
興和地所の夏目社長と、ハンス・エーク氏が外断熱に付いて話す姿を、収録カメラが捉えます。
会話収録後、プレゼンテーションルームで、ハンス・エーク氏が外断熱模型の説明を受ける姿を収録する。
興和地所さんの、外断熱模型をみたハンス・エーク氏は、『大変良い外断熱だ。スウェーデンの外断熱と同じだ。すばらしい』と、評価した。
次に、近くで建設中の興和地所さんの外断熱マンション現場を見学した。
現場は8割程度の進捗で、追い込みに入っていた。
内部を見学しながらハンス・エーク氏は、床と壁の給排水管と木下地組を見て、『スウェーデンでは管をコンクリートの中に埋め込むが、メンテナンスが大変だ。この方式は大変良い、スウェーデンで真似たい』と話し、それを写真に収めていた。
バルコニーに出て、辺りの景色に目をやるハンス・エーク氏は顔を曇らせた。
その原因は、先程から大きな音を出していたビルの解体現場でした。
この付近は、ビルの建替えが盛んに行われている様子で、2ヶ所の解体が目の前で行われていた。
ハンス・エーク氏が言った『なぜあの建物を解体するのか』、再生が主流のスウェーデンやヨーロッパの人には、理解できない風景だった様です。
『日本では30年~40年位で建替えが行われています。』と答える、堀内事務局長の言葉を聴き、スウェーデンを訪問する日本の視察団などから聞いていた事だろうが、実際に自身の目で見た現実に驚いた様子だった。
さらに横のビルの屋上のクーリングタワーが、廃熱蒸気と大きな音をだしているのを見て『地球温暖化の基ですね』、堀内事務局長が言うとハンス・エーク氏は苦笑した。
解体現場を写真撮影するハンス・エーク氏。
恥ずかしい写真と感じたのは、そこに居たハンス・エーク氏以外の日本人だろう。
帰国した、ハンス・エーク氏はその写真をどんな説明で話すのか?
折角、日本で外断熱工法に取り組んでいる企業に合格点を出し、気分を良くしていたハンス・エーク氏は、ビルの解体現場見て日本の取り組みの明と暗を見た思いなのか、盛んに首を振って理解出来ない気持ちを表現した。
現場視察を終え、昼食の席でハンス・エーク氏は、外断熱マンション見学の感想を語った。
『断熱とその考え方は大変良い』と評価しながらも、『断熱厚さは2倍位にするとエアコンのエネルギを
もっと少なくできる。バルコニーも更なる改善でヒートロスを完全に無くせると思う。』と高度な注文を付けた。
東京都内では勿論、北海道でもこれだけの外断熱厚さの建物であれば十分と考えていた我々だが、ハンス・エーク氏の目にはまだまだ不足の様だ。
また、日本のマンションには付き物のバルコニーに対し、構造とコストの両面から断熱区分の難しい状況を指摘された思いだった。
無暖房住宅設計者の目には、『日本で最高の断熱厚さも貧弱に見えるのか』と思った。
昼食を終え休む間もなくタクシーで、次の講演予定である衆議院第一議員会館に向かった。
環境・省エネ外断熱工法推進議員連盟の勉強会で講演を行うためだ。
講演は、井上和雄(民主党)議員の司会で行われた。
議会開催中でしたが、時間の取れた議員が5~6名が出席した。
(ハンス・エーク氏講演内容は、長野講演とほぼ同じなので省略する。)
講演後、各議員からのハンス・エーク氏への質問は、
①スウェーデンの断熱基準はどの位か?
170㎜が最低基準です。
建築基準法で決まっています。
②外装がガラスで覆われた建物がスウェーデンにもあると思うが、それをどの様に考えて見ているのか?
ガラスの外装については、私はなんとも言えない。
たぶん行政を騙して建てているのではないか。(場内笑い)
③日本の湿度対策はどうするべきか?
高断熱は温度、湿度の調整が楽に出来る。
高湿度の日本の気候にも対応できると思う。
以上の様な質問のやり取りがあった。
続いて、お茶の水女子大学生活科科学部教授田中辰明教授が『無暖房住宅と外断熱』と題して講演を行った。
長野県内の病院における、外断熱病棟と内断熱病棟の熱伝導の違いを実例をあげて紹介し、結露による病院内のカビ発生などは、直接健康に影響する状況にあることなど話し、早急な対応を呼びかけた。
また、外高断熱はヒートショックなども防げ、弱者にとってやさしい建物になるとも説明した。
環境・省エネ外断熱工法推進議員連盟講演は盛況な内に終了した。
講演を終え、タクシーを拾う間に、ハンス・エーク氏は国会議事堂を写真に収めてた。
ハンス・エーク氏が来日して以来、都内宿泊中に見物に要する時間は無い。
我々は、日本講演に措ける、無暖房住宅の設計者ハンス・エーク氏のインパクトの強さを目の当たりしていた。
だから、ハンス・エーク氏を出来るだけ多くの人に合わせ、その効果を期待した。
そしてこの数日間の反響の大きさと、彼から得る多くのヒントとアドバイスは期待通りだった。
彼には申し訳ないが、見物の時間は殆んど無い。
夕食会は、都内の中華レストランで行われた。
食後、六本木のお洒落なスナックへ。
生演奏をする店で、ハンス・エーク氏がバイオリン演奏をすることに成った。
スウェーデンでは、バンド演奏を行っていると言うだけに、かなりの腕前だ。
引きなれていない曲も、即興で対応している。
スウェーデンからわざわざ持ってきたバイオリンを楽しそうに演奏している姿に、溜まっていたストレスも幾らか解消されのではないかと思った。
ハンス・エーク氏は、夜がふけもの忘れて演奏していた。
明日は、東京公演の日だ。
その10に続く。