【東京講演】
目黒区民センターホール 2005年2月25日(金)
愛宕山東急インから、ハンス・エーク氏、友子・ハンソンさんと私の三人は、講演会場の目黒区民センターに向かった。
ホテルから徒歩で、神谷町駅から地下鉄に乗ることにした。
ハンス・エーク氏は、朝早く起き付近を歩いたらしく、駅に向かいながら朝に見た付近の様子を友子さんにいろいろと説明している。
地下鉄駅近くの、大通りに面したビルとビルの谷間に残る木造住宅を、ハンス・エーク氏には不思議な光景に映ったようだ。
カメラに収めている。
その光景についてハンス・エーク氏は、『都市計画は行われているのか?』と質問してきた。
『バブル景気の落とし子ですね』ジョークとも付かない回答をしたが、日本の歪をまた一つ見せてしまった思いがした。
地下鉄で中目黒駅に向かった。
ハンス・エーク氏は地下鉄に乗りたかった様だ。
車内では地下鉄路線図を見ていた。
中目黒駅からタクシーで、会場の目黒区民センターに向かった。
ハンス・エーク氏と友子・ハンソンさんは、各パネラーとの打ち合わせを行うため、別室に向かった。
平日の為、入場者数が気に成っていたが、無暖房住宅への関心の高さからか思った以上の盛況だ。
13:00東京セミナーが始まった。
最初に友子・ハンソンさんが『住を大切にすること~スウェーデン人の考え方』と題し講演され、スウェーデン人が人生で大切にする物の順序は、①住まい ②バカンス ③車 である事。
スウェーデンでは、住まいの購入に際して、税金控除が大きい事。
現在の、スウェーデン人の住まいの選択基準は、女性は立地条件、男性はブロードバンド設備と二分されている事。
ストックホルム市でおきた、欠陥マンションの施工業者の処分が大変厳しく、その会社の株価が暴落している事などスウェーデンの最新情報を交えて住いに対する、2国の違いを話された。
また、現代社会において、私達が持っている最大の強みは、何を行うにしても選択が出来る事であり、良い選択の基準は省エネで、私達の使命は次の世代に良い状態で地球を残し引き渡す事であると話した。
続いて、堀内事務局長がスウェーデンでは、新しいエネルギーを造りだすことよりも、現在のエネルギーを出来るだけ使わないことを重視して、次世代のエネルギー開発までそれを繋ぐ事を考えている話しをした。
その後、ハンス・エーク氏の講演が行われた。
ハンス・エーク氏の講演は、時折ジョークを交え場慣れしてきた感じを受けた。
日本人はどんな事を話せば笑うのかなど、壷が分かってきた様だ。
講演中のハンス・エーク氏と通訳の友子・ハンソンさん
(ハンス・エーク氏の講演内容は、長野講演と類似するので省略します)
休憩をはさみ続いて、パネルディスカッションが行われた。
出席者は、
ノンフィクション作家の山岡淳一郎氏が総合司会を務め、
ハンス・エーク氏(通訳:友子・ハンソンさん)
全国地球温暖化防止活動推進センター代表の大木 浩氏(京都地球温暖化防止会議議長)
お茶の水女子大学生活科学部教授の田中辰明氏
環境問題スペシャリストの小澤徳太郎氏
康和地所㈱代表取締役の夏目康広氏
外断熱推進会議事務局長の堀内正純氏
以上の8名で行われた。
大木 浩氏は、
地球温暖化に対して、日本人各々が何をすべきか考えてほしい。
今のライフサイクルや経済を変えず、6%削減目標の達成は無理であり、日本人一人ひとりの意識改革が急務であると訴えた。
(この言葉通りに、2006年では目標値よりも7%の温室効果ガス増加が分かり、6+7=13%の削減をしなければ、京都議定書通りの数値には到達出来ない状況に成っています。)
小澤徳太郎氏は、
京都議定書の位置付けは、各国により異なり日本の考えも、スウェーデン国から見ると甘い捉え方だ。
認識と改革を持って取組まなくては、日本の基準達成はおぼつかないと、強く訴えた。
夏目社長は、
自宅でもある外断熱マンションに義母さんが泊まられた様子を語られ、外断熱工法の体感上の違いを説明した。
こうした中で、小澤徳太郎氏発言と友子・ハンソンさんの言葉が特に印象深かった。
同じオイルショックを受けたが、まったく別の道を歩んだ日本とスウェーデンは、すべてに対照的だったことだ。
スウェーデンは省エネ政策や脱石油を掲げ推進してきた、日本はオイルショック時のトイレットペーパー騒動の買いだめが如く、石油産油国との関係を強化し国内備蓄を進めた。
住いは、断熱と気密化の強化を図ったスウェーデンに対し、日本の断熱基準は北海道を見ても、現在スウェーデンの半分の数値でしかない。
高断熱、高気密は言葉の先行であり、内情は脆弱な断熱と理論と噛み合わない気密でしかない。
日本の窓もドアも省エネには程遠い性能の物しか作られていない。
スウェーデンは脱原発を宣言し、バイオや自然エネルギーを主体にしたエネルギー政策を進めている。
無暖房住宅もその過程から生まれた。
ハンス氏が講演内容で話す、初めに英知を結集して建てた住宅設計が失敗したが、建て主から励まされ再度省エネ住宅に挑戦し、やがて究極の無暖房住宅に行き着く過程は、スウェーデンが国を挙げて行っている『持続可能な社会の構築』の発想が無ければ有り得なかったのではないかと思う。
国民一人ひとりへの、教育や情報提供が偉大な功績を産む土壌となり、さらにそれは良い結果招き、国の財産となる。
そこには知識の循環型社会が、構築されていると感じた。
無暖房住宅だけを見ると、そこまでしなくても良いのではないか。
その前段階程度で十分ではないか。
今まで、無暖房住宅を視察した日本人はそう思ったことだろう。
スウェーデンと言う国の考え方や、歴史が無暖房住宅を生む結果となった様な気がした。
そして、何よりもハンス・エーク氏の精神や哲学無くして、無暖房住宅完成は無かったことだろう。
ハンス氏の講演は3回目になるが、毎回新しい視点で無暖房住宅が見えてくる。
今回の講演で感じた事は、『本物は哲学が無くては生まれない』と言う事だ。
あすは、地球温暖化防止京都会議(COP3)発効の地、に向かう。
ハンス・エーク同行記 11.東京から京都へ に続く