スウェーデン国、ルンド市ルンド大学で、建築物理学の権威者アーネ・エルムロート博士のレクチュアを受けました。
その(5)
スウェーデンでは、30年前の第一次オイルショック以降、建築物は全て外断熱で断熱されています。
内断熱と外断熱の熱移動(ヒートシュミレーション)についての説明写真です。(赤は温度高く、青は温度が低い事を示します)
外断熱は、ヒートブリッジによる熱損失が有りません。
床、壁面の境界面温度は19.4℃です。(室温は20℃)
内断熱は、ヒートブリッジによる熱損失有ります。
床、壁面の境界面温度は9.1℃です。(室温は同じく20℃)
つまり床、壁面での温度差が、実に10℃もあるのです。内断熱の床、壁面は露点に近づき結露のおそれが出てきます。
天井高さ2.7mの室内(右側:外断熱、左側:内断熱)
U値 0.21W/㎡・K 0.55 W/㎡・K
床の温度 19.4℃ 9.1℃
外断熱の有利性が解ります。
鉄筋コンクリート造の建物に措ける外断熱工法で注意しなけらばならない点は、バルコニー、階段室などの壁、床部分からのヒートブリッジ対策です。
出来るだけ、断熱材で絶縁する方策が必要です。
スウェーデンの一般的な外断熱工法の説明です。
乾式通気層工法の外断熱です。
鉄筋コンクリート壁の外側に、断熱材を2層設けています。その外側にレンガを積みます。
断熱材とレンガの間には、20~30㎜の通気層が有ります。
この通気層には、外壁の下部と上部から外気が入り、断熱材を湿気から守り乾燥させる役目をしています。
湿式の外断熱工法です。
特殊な外装仕上げは、断熱材の湿気を外部に放出させます。
最近スウェーデンでも多く採用されています。
20年前におこなった鉄下地材を使った外断熱工法です。
この工法は、失敗に終わったと説明されました。
この絵は、最近北海道で行われている鉄筋コンクリート共同住宅の外断熱とそっくりです。
同じ失敗にならなければ良いのですが。
最近増えている湿式外断熱工法です。
乾式工法よりもコストが掛らない点と、外装デザインや色にも自由性が有ります。
既存の建物に対しての断熱改修にも適しています。
【アーネ・エルムロート博士レクチュアの総括】
熱交換換気扇はエネルギーを無駄にしない。
第三種換気方式は、吸気にバラつきがあり不安定で、熱の再利用もできない。(風による影響→無計画換気)
断熱材を作る際、地球環境を考えなくてはならない。(製造エネルギー、廃棄対策、環境への影響、リサイクル性など)
どの様な建築材料を使うかの判断は、その材料がどの様にして作られたを知る事も重要な要素だ。
住宅を建てる場合も、環境に影響が少ない方法や工法を選択し、全てのプロセスを考える事が大切だ。
第三種換気方式は、スウェーデンでは不快であるとのアンケート結果が出ている。
第一種換気方式(熱交換型)は50年で元が取れる。
もし、現状より電気のコストが上がれば、40年で元が取れる。
換気機械は25年で交換が必要になる。
付加価値まで考えると、熱交換換気扇だと思う。
熱交換換気扇は、スウェーデンでもまだ普及段階だが、今後は一般的に成っていくだろう。
博士が最後に結んだ言葉は、『良い物を造り、永く使う事が、一番安上がりに成り、環境や省エネルギーに成る。これからの時代背景を考えると、その考えは正しいでしょう。』と話された。
スクラップ&ビルド、使い捨ての言葉や考え方に慣れきっている日本の状況を考えると、耳が痛く、何とかしなくては成らないと感じた。
エルムロート博士の言葉に感動した。自分の目指していた方向が正しかった事が、自国から遠く離れた地で見つけられた喜びと、勇気を貰った。
そして、それを実践している、スウェーデン国の底知れぬ力も同時に感じた。
チャルマシュ工科大学レクチュアへ続く