スウェーデン国、ルンド市ルンド大学で、建築物理学の権威者アーネ・エルムロート博士のレクチュアを受けました。
その(2)
スウェーデンのエネルギー種類別使用量。 上の段、左より石油、天然ガス、石炭、バイオ、地熱、水力、原子力の順。 下は、住宅、工業、運送(交通)など部門別。
住居におけるエネルギー使用量では、集中暖房での使用量が増えている。
比較的エコエネルギーである、電気使用量が増え石油の量が減ってきている。
50%の省エネルギー効果で、エネルギー総使用量は年代別には変わっていない。
1970年~1990年における125㎡の戸建て住宅のエネルギー変化です。
グリーン:人体発熱、オレンジ:太陽光(窓を通して入る熱)、ピンク:家庭用電気、赤:暖房用(ヒーティング)、注目は暖房の半減率が大きい事です。
1970~1980年で1/2になり、1980年~1990年でさらに1/2に成っている。
これは、あくまでもノーマルな造りの、新築住宅に措けるデータです。
断熱基準部位ごとのエネルギー流失変化。
ピンク(南スウェーデン)、オレンジ(北スウェーデン)1990年に南北の基準を統一した。
この基準は、強制的で絶対守らなくてはならない基準です。
水色は窓で、1990年は、1975年と同じ位です。
ここで、注目すべきは1990年から南北スウェーデン基準を撤廃し、エネルギー基準を全土統一にした事です。 北欧に位置するスウェーデンは、北は北極圏に近く厳しい気象条件下に成ります。 その気象条件に合わせた基準を全土に採用する事は、ハイレベルな住宅建設と成ります。 これは、スウェーデンが考える将来的エネルギー政策が有るからです。
次は、壁の断熱材の厚さ変化です。1970年代は、断熱厚さ100㎜、1980年代は、170㎜、1990年代は、270㎜と壁断熱厚さの基準値が変更されています。
スウェーデンの木造住宅は、枠組み工法(日本で言うツーバイフォー工法)です。 しかし、その軸組みに使用する枠材は、1980年代からは170㎜×45㎜のサイズで、日本で使用している89㎜×38㎜(ツーバイフォー)や140㎜×38㎜(ツーバイシックス)よりも、大きいサイズです。 更に、1990年代からは、その170㎜の枠内に入れている断熱材厚の内外に、50㎜断熱を入れる基準にレベルを上げているのです。
もう1つ日本との違いが有ります。 それは、使用される断熱材の密度です。 スウェーデンの断熱材は、ストーンウールと呼ばれるロックウール材45㎏/m3です。日本の断熱材で多く使用されている繊維系断熱材は、グラスウールで、密度は24㎏/m3です。 密度の違いは、断熱材の間に留めている空気の移動の差に成ります。 断熱材は、その材料間に空気を留める事で、熱の移動を妨げています。 その空気が移動しずらい状況は、密度の差でも有ります。
天井断熱材の厚さ推移についての表です。1970年代 100㎜、1980年代 220㎜、1990年代 500㎜と、断熱厚さを増しています。
スウェーデンの天井断熱は、断熱材も密度の高いロックウール断熱材(45㎏/m3)が使われ、それを縦横にクロスして重ねた厚さが500㎜です。 日本の天井断熱に多く使用されている、グラスウールや他の繊維系断熱材を砕いて吹き込むブローイング断熱では、その断熱材からの熱損失は大きく、スウェーデンと日本では、厚さと材質の両面から大きな差が有ります。
ルンド大学建築物理学科(3)へ続く