無暖房住宅と設計者ハンス・エーク氏との出会いは、2003年1月27日外断熱推進会議:EiPC主催 スウェーデン・ドイツ外断熱視察ツアーで、スウェーデン国のイエテボリ市を訪れた時でした。
無暖房住宅については、本当に無暖房なのか半信半疑で、どの程度の物かくらいの感じで望んだ視察でしたが、実物を見て、内部を体感することで、その考えは一変してしまいました。
リンドースの団地に着き、一般木造住宅を横目に団地奥側に進むと、無暖房住宅が有りました。
黒と一部小豆色の外壁、赤茶色の屋根瓦、黄色い窓枠と玄関ドア、2階バルコニーはガラスの腰壁で、廻りの一般住宅と比べると色や造りが斬新でした。
さらに、連棟型の2階建て(テラスハウスタイプ)のため、堂々とした振る舞いに見えました。
無暖房住宅の設計者のハンス・エーク氏が建設について説明してくれました。
「南面屋根に付く太陽光給湯パネル5m2により、年間給湯使用量の50%を賄っている。 各部の断熱厚さは、屋根部分480㎜、壁部分430㎜、床部分250㎜でU値は0.1 W/m2K、窓のU値は0.85W/m2K、ドアのU値は0.80W/m2K、の各性能値である。 特に窓は、特殊なガスを入れる事で、性能がUPされている。 台所に設置されている熱交換換気扇は、1時間に0.5回の全室量の換気を行う。」
などの説明を受けました。
前日のルンド大学でのレクチャーで、現在スウェーデンでは、270㎜断熱であることで、驚いていたばかりだったが、無暖房住宅のさらに厚い断熱に一同驚愕した。 どこまで、断熱すれば無暖房住宅になるのかは、建築家であればだれでも知りたい事だと思う。 究極の寒冷地住宅が、無暖房住宅だからだ。
しかし、いざ自分で無暖房住宅を試みるとなると、自信が無いのが本音だと思う。 確実な裏づけが無ければ、またあっても失敗は出来ないからだ。 室内に入り、自分で体感するとその性能が分かった。
これはすごい、本物だ。 こんな家を、北海道に建ててみたい。
私の率直な感想だった。
2003年の視察を終えて、私はスウェーデンの断熱にすっかり魅了されていました。 理論と実践による、本物の省エネ住宅を目指す私にとって、自分の方向性を示してくれるものでした。 日本の現状は、中途半端な断熱基準で推移し、国の統一基準は次世代の名も悲しい響きに聞こえる断熱厚さです。 無暖房住宅はまだまだ先の様で、それを実践するステップや機会を計れずにいました。
そうした中、ハンス・エーク氏を日本に招き、講演会を行う事を知ったのは、2004年の暮れの事でした。
無暖房住宅の設計者ハンス・エーク氏と再会出来る事で、無暖房住宅についての疑問点が直接確認出来る又と無い機会と考え、滞在期間中の同行を希望しました。
そして、それはNPO法人EIPC外断熱推進会議の好意により実現しました。 無暖房住宅は、遠い国の出来事に終わろうとしていた私にとって、夢が現実となる様な思いでした。
日本に、そして北海道に無暖房住宅が造れるかもしれない。 そう考えてしまう自分の気持ちを押え、ハンス・エーク氏の来日を心待ちにしました。
その②『ハンス・エーク氏の来日へ』に続く。